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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年7月6日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

7月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(7/3終値※)
前週末比
(6/26比)
日経平均 9,816.07 -61.32 -0.62%
NYダウ 8,280.74 -157.65 -1.87%
金利・為替 週末終値
(7/3終値※)
前週末比
(6/26比)
長期金利 1.315% -0.080%
ドル/円 96.04  
ユーロ/円 134.25  

※米国市場は独立記念日の振替休日で休場のため7月2日付

楽観論は影をひそめるが、悲観になってきたわけでもない

前週の総括

■売買代金低下基調

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価の下落率に比べるとNYダウの下落率が大きくなっています。米国市場では週末発表になった雇用統計が市場の予想以上に悪かった(後述)ことが尾を引いて、さらには週末7月4日が米国独立記念日のため振替休日を含む3連休前ということも手伝い、安くなったままで取引を終えています。

 一方、日本市場は日経平均株価、TOPIX共にマイナス0.6%前後となったにもかかわらず、東証マザーズ指数やJASDAQ総合などは週を通じてプラスを維持、前者で+2.55%、後者で+2.63%と堅調な展開となっています。中小型株の活況を見ると一部に安心する気持ちもありますが、しかし、売買代金の傾向をみると6月第3週の平均が一日あたり1兆7214億円、第4週が1兆5676億円、そして前週7月第1週は1兆4750億円と漸減してきているのが大変気になるところです。

■経済指標がいろいろ発表になったが…

 29日には経済産業省から5月の鉱工業生産指数が発表になりました。前月比プラス5.9%の上昇で3カ月連続の改善を示しました。昨年秋からの急激な在庫調整で生産が急減したことの反動もあって持ち直しの兆しと見ることもできますが、先行きの生産予測が鈍っていることもあり、市場はこれを評価しませんでした。

 欧州では6月の景況感指数が3カ月連続の改善を示し、2008年11月以来の水準に回復したことが発表になりましたが、一方で6月の消費者物価上昇率が1999年の通貨統合後初のマイナスになり、長期のデフレに陥る可能性こそないとは言われたものの、実態がまだまだついてきていないことが明らかになりました。そこに追い討ちをかけるようにユーロ圏の失業率が発表になりましたが、前月に比べて0.2ポイントさらに悪化した9.5%となり、スペインやアイルランドに至っては二桁に乗った状態になっています。

 にもかかわらず、欧州中央銀行(ECB)は2日の理事会で政策金利を年1.0%に据え置くことを決めました。トリシェ総裁は「現行金利は適正水準」との発言をされていますが、そこには欧州連合(EU)という寄り合い所帯を統合して運営する難しさが見えてきます。そもそも欧州は日本のバブル期に匹敵する金融緩和によるバブル崩壊の真っ只中にあり、安易に金融緩和をしづらいという側面もありますが、工業国と農業国が混然一体となっている経済連合の舵取りは難しく、日米欧の中で最も今回の景気低迷が長引く可能性の高いエリアとなっているように思われます。

 2日には米国6月の雇用統計が発表になりました。それによると非農業部門雇用者数は前月比46万7000人の減少で市場予想の36万7000人を大きく上回る結果となりました。一方5月は32万2000人減と、速報値の34万5000人減から修正されましたが、就業者数の減少は18カ月連続で、第2次オイルショック後の長期停滞に陥った81〜82年を超える戦後最長の悪化となっています。失業率は9.5%と予想(9.6%)を下回ったものの、前月よりはさらに0.1ポイント悪化で、米国の雇用情勢の底入れは遠い印象を与えました。

 そもそも米国の雇用統計、先月5月の非農業部門雇用者数が速報値の34万5000人減と絶対水準はマイナスのままなれど、その減少幅が大きく改善されたことを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測が浮上するほどにエキサイトした後だけに、今回のこの数字が与えたインパクトは楽観論を打ち消すのに大きく一役買ったはずです。

■経済指標ではないですが…

 前回(6月29日)のメルマガで「骨太の方針が骨細に」ということを申し上げましたが、財務省が発表したところによると、2008年度の税収は44兆2674億円と年度当初の予算約53兆6000億円から見ると9兆3326億円も減少したことになります。もちろん、昨年末に下方修正をしているとはいえ約17.5%の減収というのは日本の財政基盤にとっては極めて厳しい結果だと言わざるをえません。例えば、今年は年収1000万円と予想していた家計が、賞与カットなどで実際には825万円になったとしたら、どういうことになると思いますか?普通は生活水準を落とすとか、節約して何とか切り抜けようとすると思いませんか?今、自分たちが苦しくなるのは嫌だから、子供や孫が返済することにして、借金しちゃえ!ってことにはなりませんよね?

 さらには昨年の公的年金の運用損が9.6兆円となってしまったことが発表されました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発表した2008年度の運用利回りはマイナス10.03%、結局2兆円近い累積損失に転落したことが発表されました。現在、厚生労働省が用いている公的年金の財政検証に関わる将来の運用利回りは4.1%。この水準を達成しないと年金財政はさらに今年度も悪化することになり、前述の税収減とあわせて、日本の財政赤字の現状は決して米国のそれを他人事のように非難できる状況ではますますなくなってきたことが明確になってきています。市場の目線がこうしたことを踏まえて、日本の政治の現状、与野党の姿勢に向けられる時、円ベースの金融資産の将来に明るい未来を描けるのかというと疑問なしとはしません。何せ、日本の人口動態ピラミッドは逆三角形なのですから。

■市場の話とは直接関係ありませんが…

 そんなあまり盛り上がる話がない中で、未来を描ける話が始まりました。それこそが高速無線「WiMAX(ワイマックス)」の商用サービス開始です。受信の場合で最大毎秒40メガビットの帯域幅はADSLと比較してもそう遜色はないレベルです。恐らく基地局との距離などを考えると、かなりな割合で有利になる場合もあるかもしれないネットワーク通信環境が、屋外や移動中でも利用できるということは、かなり高い確度でまた人々の生活スタイルや多くのビジネス・モデルを変化させると思われます。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは原油価格の推移です。-----米国産標準油種(WTI)の価格は70ドルを超えに行った一時期の勢いを失い、景気回復の遅れから需要が伸びないことを織り込み始めました。>

今週のポイント

■市場はL字型よりW字型の景気回復を織り込もうとしているのか?

 今回の金融危機の震源地とされる米国の5月の雇用統計を受けて、いったん市場は年内の米国利上げまでを想定するほどまでの楽観論に傾きつつあるかにも見えましたが、債券市場の動向などを見ていると、どうやら逆の絵を織り込みつつあるかに見えます。つまり景気は回復しないL字型、もしくはある程度回復はするけれど、すぐに腰折れして2番底を探りに行くと見るW字型のシナリオです。

 そう思われる理由の一つは、米国金利の状態です。10年国債の利回りが3.49%にまで低下してきています。5月の雇用統計を受けて4%を付けるところまで上昇した長期金利ですが、すでに50bpも低下したことになります。

 日本においても、直近で1.55%まで跳ね上がっていたものが、週末の終値では1.315%と約3カ月ぶりの水準にまで低下しています。インターバンク市場短期金利の代表である無担保コール翌日物も、日銀の金融調節によるところもありますが、0.1%を切る水準に週の半ばから放置されています。株式市場よりは債券市場の方が理詰めであることは事実であり、そうしたことを踏まえて、市場からは楽観論が引きつつあると思われます。

 今週米国では6日に10年物インフレ連動債(TIPS、80億ドル)、7日に3年物(350億ドル)、8日に10年物(リオープン発行、190億ドル)、9日に30年物(リオープン発行、110億ドル)の国債入札が行われますので、需給状況など注目したいところです。

■クラウド・コンピューティング

 この週末、楽天証券の『10周年記念投資セミナー』が東京に先行して、大阪で行われました。会場は朝から満席になるほどの大勢のお客様にお越しいただき、関係者一同大喜びながらも、その対応に大わらわだったのですが、私も最終17:15(予定から10分程度の遅れ)からのパートで講演をさせていただきました。さすがに朝からの長丁場で、最後までお付き合いお残りいただいたお客様の表情も、ステージの上から見ても明らかにお疲れのご様子、極力、話をコンパクトにさせていただきましたが、後半は「クラウド・コンピューティング」について解説いたしました。前述のWiMAXの商用サービス開始という話題もあり、これから注目されるビジネス・トレンドの最右翼のひとつだと考えるからです。最近では新聞紙上でもだいぶ取り上げられるようになってきました。

 ネット証券でお取引きなさるようなお客様のITリテラシーならば、あえて時間を割いて聞かなくても良い方もたくさんいらっしゃるだろうと思いますが、あるいは、クラウド・コンピューティングという概念自体はそう目新しいものではないとも言えますが、株式市場の中ではまだあまり議論が尽くされていないテーマと考え、今回の講演の話題とさせていただきました。このトレンドがブレークするための諸技術や環境が臨界点を迎えてきているというのが率直な実感であり、また環境という切り口から捉えても話題豊富なものでもあり、ゆえに今回取り上げさせていただきました。7月12日の両国国技館でも引き続き大トリではございますが、このクラウド・コンピューティングについて、お話しさせていただきたいと思います。

■結論:全体感は慎重に、個別の面白みを探る

 今週も先週と引き続き、全体論は慎重ながらも、クラウド・コンピューティングのような期待できるビジネス・トレンドを探し、そうした流れの中でメインプレイヤーになるような企業への投資をじっくりと仕込んでいくような状況と考えています。アクティブ運用をするには良いタイミングに入ってきたという考えは変わりません。

 またあえて日本株にこだわらないでも良いだろうとも思っています。例えばパソコンの中心部には常にインテルがおり(約80%)、携帯音楽を聴く時はアップルがいるわけですから。身の回りにこれだけ外国製品が溢れている時代、投資だけが「日本」と「外国」を分けるというのもおかしな気がします。そしてそうして目線を広げた方が投資機会は多く提供されると思います。私が金融市場としての流動性リスクなど総合的に考えて、シリコンバレーの息吹を直に感じるNASDAQ市場が、オバマ大統領誕生以降、最も面白い市場のひとつと考えている事は、このメルマガをお読みいただいている皆様にはお解りいただけていると思っています。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪JASDAQ総合指数は前週を通じてプラス維持、堅調な展開!≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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