※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年6月8日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

6月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(6/5終値)
前週末比
(5/29比)
日経平均 9,768.01 +245.51 +2.66%
NYダウ 8,763.13 +262.80 +3.17%
金利・為替 週末終値
(6/5終値)
前週末比
(5/29比)
長期金利 1.495% +0.015%
ドル/円 98.82  
ユーロ/円 138.04  

日経平均株価は10,000円台を回復できるか?

前週の総括

■日経平均株価、連日の年初来高値更新

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は6月4日を除いて連日の年初来高値更新となり、10,000円の大台回復という言葉がにわかに真実味を帯びる展開となってきました。売買代金も週間平均で1兆5835億円となり、週末東証1部の時価総額は7カ月ぶりに300兆円台を回復しました。TOPIXも週を通じて900ポイント台を維持、週末終値は916.56で、東証マザーズ指数も週央3日は昨年9月30日以来となる400ポイントを一時回復して402.00をつけました。

■米国市場も元気回復、とりわけNASDAQが元気

 同様に米国株式市場においても、週を通じたNYダウの上昇率は+3.17%となり終値が8,763.13ドルとなったことは表の通りですが、この間S&P500の上昇率は+2.36%に留まる一方で、NASDAQは4.44%の上昇となっています。私が常時ウォッチしている日米の株価指数の中ではこのNASDAQが最大の上昇率となりました。かねてから申し上げているオバマ民主党政権の誕生はNYダウよりNASDAQに有利となる論点の検証を1月20日の大統領就任式当日を起点とする騰落率で評価すると、NYダウの同期間の上昇率は+10.24%であるのに対し、同NASDAQのそれは+28.36%におよび、その乖離は先週よりさらに拡大して18.11%に達しています。

■GM破綻で投資家心理が各市場で転換

 今週のこの上昇はGM(General Motors)が6月1日に破綻申請を行ったこと、それが米国政府による用意周到な計画破綻であると受け止められ、市場の重石になっていた大問題が大過なく粛々と処理が進むと、少なくとも短期的なリアクションとしては市場が捉えたからと考えています。

 これを受けて反応したのは株式市場に限りません。例えば為替市場においては「金融危機に伴う経済的混乱は収束に向かいつつある」と受け取られたようで、ドルや円に逃げ込んでいた資金がユーロに向かうという絵が描かれ、一時ユーロは高値1.4339(3日)にまで上昇する一方、円は週末終値対ドルが98.82円、対ユーロが138.04円で引けるところまで売られています。ちなみにユーロ/ドルの終値は1.3969とドルが買い戻されて終わっています。

 同様な傾向は原油先物市場でも顕著にみられ、米国経済の安定化からの需要回復を期待してニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI原油先物7月限は一時1バレルあたり70.32ドルまで上昇し、68.44ドルで週末取引を終えました。この流れが裏目に出たのが金相場で、6月3日には1オンス当たり高値990.00ドルと1,000ドル目前にまで上昇しましたが、週末の終値は955.25ドルと押し返されています。その背景あるのは「ドル以外の逃げ道」を求めていた資金の利益確定かと思われます。

■長期金利中心に金利上昇はネガティブな要因

 気になる動きのひとつとしては、米国債金利の上昇があります。背景にあるのは米国財政赤字の悪化懸念ですが、この1週間だけでも10年債の利回りが3.46%→3.84%へ、2年債利回りでも0.91%→1.30%まで急上昇しています。ちなみに3ヶ月ものTビルは0.12%→0.17%と小幅に留まっています。これは日本の住宅ローン事情(固定金利や短期プライムレート連動が多い)と違って長期金利に連動する住宅ローンが主体の米国事情にとっては、渦中の住宅市場回復というテーマにとって重大な悪影響を与えるものとして懸念されます。

 日本の長期金利も週末こそ1.495%に収まったものの、週央3日には1.545%まで急騰しており決して予断は許しません。「悪い金利上昇」という言い方もされますが、中央銀行のコントロールのおよぶ範囲の短期金利水準に対して、債券市場の需給で決まる長期金利の水準は経済状況が悪い中でもこうして上昇してしまう場合があるので、この波及効果は注視したいと思います。ただ、現状この水準まで金利が上がると機関投資家の間では債券を買いたいニーズは高まるため、このままさらに長期金利が上昇し続けるというのは、日本市場においては短期的には可能性が低いかと思われます。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートはユーロ/ドルの日足1年分です。----- ユーロ/円と違って、今週ユーロは対ドルでは1.4339まで買われて、週末1.3969まで売られました。>

今週のポイント

■安心するのはまだ早いと思われる

 「GM問題は片付いた」という一面だけを捉え「最悪期は脱した」というセンチメントが各金融市場全体に広がっており、論調も日経平均株価の10,000円台回復の可否へと変わってきていますが、ちょっと安易過ぎるのではないかと考えています。いくつかのその論点を列挙してみます。

  1. 新生GMが早期に再生できるかどうかにはあまりに不透明要因が多い(緊急レポート「GM破綻をどう捉えるべきか」もご参照下さい)。
  2. 4月にクライスラー、6月にGMと破綻してビッグ・スリーの伝説は終焉したが、フォードの破綻の可能性、そのリスクについては市場があまり見ていない。
  3. すでに米国サプライヤー(自動車部品メーカー)の大型破綻が始まっているが、そのサプライ・チェーン断裂の影響はまだ未知数すぎる。
  4. 長期金利上昇、原油価格上昇などは回復期のファンダメンタルズに悪影響を及ぼす。
  5. 米国消費が回復しなければ、中国経済の回復は内需に頼らざるをえなくなる。
  6. 米国住宅市場の回復は、住宅在庫の増加などもあり、まだ安心できる状況にはない。

 上記のような論点が整理されないままに、市場は安堵感を持って、商品市場や新興国市場を中心に「投資家のリスク許容度は回復した」という論を展開するセンチメントが高まっているように思われます。事実、週末に発表された米国雇用統計は5月の失業率が9.4%(前月8.9%)と予想の9.2%を上回り1983年以来の高水準に達したものの、非農業部門雇用者数が前月比34万5000人減少と予想の52万人減少を大幅に下回った(マイナス幅は過去8カ月間で最小)ため雇用市場の回復と受け止められたようですが、GM破綻の影響の広がりはこの数値にはまだカウントされていないはずです。勿論、フォードのムラーリCEOの経営手腕を否定するものではありませんが、一時的に手元資金が3社の中で余裕があったからというだけでフォードだけがこのまま安穏として居られると見るのは早計な気がします。

■でもNYダウの銘柄入れ替えは好材料

 米国消費者の資産構成から考えても、米国株式市場の上昇は単にセンチメントの回復のみならず、実際に購買余力を与えてくれるものですが、今回のGM破綻に伴って発表されたNYダウ採用30銘柄のうちの2銘柄の変更は大変ポジティブな材料となります。

 添付の表はNYダウの6月4日の終値(8,750.24ドル)を元に、構成銘柄30種個々の指数への影響度を計算した表です。NYダウの計算方法は極めてシンプルで、構成銘柄の全部の単純合計を除数で割るだけで済むのですが、この結果、株価の絶対水準が高いほど当該銘柄の変動が指数に与える影響は大きくなります。表の一番右側の列にある数値が、各銘柄が1%変動した場合に、NYダウに与える影響を示しています。最上位のIBMは1銘柄で8.48ドルのインパクトとなる一方で、最下位のGMはわずかに0.05ドル、つまり5セントのインパクトしか与えません。

 今回、この最下位GMとその上にあるシティ・グループがネットワーク機器最大手のシスコシステムズと保険会社のトラベラーズにそれぞれ8日より変わることになりました。前者の週末終値は19.87ドル、後者は43.75ドルです。注目点は下記の2点です。

  1. GMとシティ・グループ併せて5ドルに満たない株価であったものが、新規採用銘柄二つで60ドルを超えることにより、除数も変わり、指数としての安定感が変わる。
  2. シスコシステムズはNASDAQを代表する企業のひとつであり、好調なNASDAQの動き(前述の論点)をNYダウにも持ち込むことになる。ちなみにNYダウの中には既にインテルとマイクロソフトの2銘柄がNASDAQから採用されており、これで3銘柄と1割がNASDAQ銘柄となった。

小さな論点かもしれませんが、期待を持てる話だと思っています。

  名称 直近価格
(6月4日現在)
影響度
1 IBM IBM 106.49 8.48
2 エクソンモービル XOM 72.08 5.74
3 シェブロン CVX 68.26 5.44
4 マクドナルド MCD 60.99 4.86
5 スリーエム MMM 59.50 4.74
6 ジョンソン・エンド・ジョンソン JNJ 56.16 4.47
7 ユナイテッド・テクノロジーズ UTX 54.69 4.36
8 プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー PG 53.81 4.29
9 ウォルマート・ストアーズ WMT 50.88 4.05
10 ザ コカ・コーラカンパニー KO 49.09 3.91
11 ボーイング BA 48.37 3.85
12 キャタピラー CAT 36.66 2.92
13 ヒューレット・パッカード HPQ 35.63 2.84
14 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー JPM 33.98 2.71
15 ベライゾン・コミュニケーションズ VZ 29.59 2.36
16 デュポン DD 28.89 2.30
17 メルク MRK 27.59 2.20
18 クラフト・フーズ KFT 26.81 2.14
19 ウォルト・ディズニー DIS 25.08 2.00
20 アメリカン・エキスプレス AXP 24.48 1.95
21 AT&T T 24.46 1.95
22 ホームデポ HD 24.37 1.94
23 マイクロソフト MSFT 21.73 1.73
24 インテル INTC 15.94 1.27
25 ファイザー PFE 14.89 1.19
26 ゼネラル・エレクトリック GE 13.50 1.08
27 バンク・オブ・アメリカ BAC 11.21 0.89
28 アルコア AA 10.07 0.80
29 シティ・グループ C 3.39 0.27
30 ゼネラル・モーターズ GM 0.62 0.05

(楽天投信投資顧問 6月4日時点の株価をもとに作成)

■結論:まだ楽観すべきタイミングにはなっていない

 日経平均株価の10,000円台回復の可能性を否定するもので、嫌がるものでもありませんが、ただ状況はそう簡単に上抜けられるほど好転はしていないというのが結論です。バリュエーションの水準も楽観できるレベルではないのですから。そしてもうひとつ、ボラティリティの動きがやや気に掛るところとなってきました。このあたりについては次回ご報告いたします。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪米国市場が元気回復!米国のハイブリッド優先証券に注目!≫

■元気回復の米国市場に投資!

AIG米国優先証券ファンド

特徴:米国のハイブリッド優先証券を主要投資対象とする。独自の銘柄選定基準により、割安と判断される銘柄を選定し、分散投資を行う。原則として、為替ヘッジを行う。高水準のインカム収入の確保を目指すとともに中長期的に投資信託財産の着実な成長をめざして運用を行う。

ファンドのレポート情報はこちら

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。株式投資などの有価証券投資は、投資元本が保証されているものではありません。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2009 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.