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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年5月25日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/22終値)
前週末比
(5/15比)
日経平均 9,225.81 -39.21 -0.42%
NYダウ 8,277.32 +8.68 +0.10%
金利・為替 週末終値
(5/22終値)
前週末比
(5/15比)
長期金利 1.430% +0.005%
ドル/円 94.77  
ユーロ/円 132.66  

市場は正念場!ただあまり深刻に考える必要はない

■小動きな市場、それは当然なこと

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。表をご覧いただけば一目瞭然ですが、日米株式市場共に小動きとなっています。ただこの一週間の出来事や置かれた環境からすれば極めて市場は冷静に反応しているともいえ、またこの半年間や一年間というスパンで市場を俯瞰した場合、市場が小動きになるというのは至極当然なことだと考えます。

 この一週間、国内では1−3月期実質国内総生産(GDP)が前期比4.0%(年率15.2%)のマイナスとなり、戦後最大のマイナス成長となったことが発表されました。また米国では4月の住宅着工件数が季節調整済みの年率換算で前月比12.8%マイナスの45万8千戸と、今年1月に記録した過去最低を更新しました。英国では英国債の格付け見通しがS&P社により「ネガティブ」に引き下げられました。そして世界中で「豚インフルエンザ」の蔓延が騒がれ「パンデミック」一歩手前の段階と世界保健機関(WHO)も評価しています。さらに、米英両国は3連休を控えていました。市場は過度な悲観論からの訂正局面を経て、まさに今が正念場、小動きだったことは高く評価できると思います。ただ一部にはおかしな動きもあり、センチメント先行の市場への順張り対応は慎重に行いたい局面です。

■日本の豚インフルエンザ騒ぎは極端過ぎる

 「マスクが売り切れた」という報道に接した時、最初に思い出したのが石油ショックの時の馬鹿騒ぎ。私自身はまだ社会人にはなっていない頃の話ですが、当時トイレット・ペーパーの買い占め騒ぎへと発展した日本的な集団ヒステリー騒動に呆れたことを思い出しました。予防という意味でのマスクの使い方、誰が本来使うべきなのかを含めて正しい情報が伝わらないままにこうなってしまうのはなぜでしょうか?ただ関連銘柄の暴騰も含めて、日本市場と付き合う方法のヒントも与えてくれた出来事なのは事実であり、あとはこの騒ぎすぎが、まさに足元回復しかかっているこの個人消費のブレーキ役とならないことを願うばかりです。人々が再び巣篭もってしまったり、出社できない社員の増加などで企業活動などに影響が出たりするようなことがあれば、いろいろな見通しを変えざるを得なくなります。

■ユーロ高には違和感を覚えています

 下記にユーロとドルの関係をみるチャートを添付しました。今年3月初めに昨年後半に付けたユーロ安水準と並ぶ1ユーロ1.25ドル台を付けた後、途中スイス中央銀行の自国通貨(スイス・フラン)売りユーロ買いの介入などを受けながら、N字型の回復をし、目下1.40に絡むところまできています。背景説明はいろいろとなされていますが、米国の財政赤字拡大を受けて、米国債の格付けが引き下げられる懸念によるというものと、世界的な株価回復を受けた投資家のリスク許容度回復を受けて、ドルに退避していた資金が動き出したというものがそれらの双璧だと思いますが、ユーロを積極的に買いに行く理由付けとしては弱いと考えます。これは後述しますが、商品市況に対しても同様でどちらも米国を中心とした比較感であり、ファンダメンタルな理由付けは難しいままです。

 例えば、国際通貨基金(IMF)の統計によれば、09年−10年に欧州の銀行が計上するであろう不良債権関連の損失額は約1兆ドルとリーマン・ショック以前の約3倍に膨らむ見通しであり、これは米銀のそれの約2倍であたります。基本的な構造が米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)では異なり、自国内の銀行を直接管理監督出来るFRBと、各国の中央銀行を通じてそれを行わざるを得ないECBとでは資産査定などの状況把握ひとつとってみても違いがあり過ぎると言わざるを得ません。ストレステストの可否ひとつとってみても、その違いは明らかですが、目先はその分内在されているリスクが見えがたいがために、透明性の高い米国に比べて批判の対象になりがたいというのが現下の流れだと思われます。

■デ・ジャブーな動き

 前述のユーロの動きと併せ、いくつか違和感のある市場があります。円相場もそのひとつです。週末NY市場での終値ではドルが94.77円、ユーロが132.66円となります。つまり、円はユーロよりは弱い(安い)がドルよりは強い(高い)というのが先週の流れですが、財政面、政治・政局面そして景況感とどこから紐解こうと思っても、そこに見えてくるのはかつてのデ・ジャブーなように思われます。つまり長くは続かない。

 もうひとつが原油を始めとする商品相場です。原油に限って話をすれば、WTI原油先物が先週62ドルを水曜日に回復し、週末も61.67ドルで引けています。確かにドバイ原油に比べてWTIの方が長く安値に放置されたというのも事実ですが、原油需要の回復感と比較するとやはり違和感を覚えます。金相場や穀物相場にも似たものを見ます。ただこれらが定着してしまうようだと、株式市場にとってはマイナス要因となります。

■投資家のリスク許容度が回復したという幻想!?

 前述の違和感のベースにあるのが、投資家のリスク許容度が回復したという前提を裏付けられないでいるからということがあるのかもしれません。また今回の一連の金融危機の中で、資本市場の構造が大きく変わったという実感があるからかもしれません。その中で欧米や新興国市場を含む株式市場、債券市場、為替市場、商品市場などの各金融市場の動きとそのストーリーを確認してみると、過去の強い記憶の中に市場全体がいったん戻ろうとしているだけのように見えてきます。だからこそ、この状況が最初の正念場だと考えています。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートはユーロの対ドル・チャートの日足です。----- 昨年12月以来の1.400台のラインに触れてきました。>

今週のポイント

■しばらくこの水準を維持できれば合格点

 大きな流れの中で考えれば、日本株式市場は現状の日経平均株価の水準、すなわち9,000円台というこの水準をしばらく維持できれば上々、次への期待が描けるものと考えており、ここで10,000円台回復を期待したり、8,000円台突入から再悲観になったりする必要性はないと思っています。米国株式市場でいえばNYダウで8,000ドル台を維持しながら、NASDAQ市場が1,700ptsを固め、前回示したように200日移動平均線に上値を抑えられている状況から抜け出てくるタイミングを待つのがひとつの着眼点です。ここでは大きく望まないで市場を見ています。

■月末週、経済統計がいろいろと発表される

 今週は月末週に当たるため日米欧揃って多くの経済統計が発表になります。注目のひとつは米国の住宅統計関連です。27日(現地時間)には4月の中古住宅販売件数が発表になり、翌28日には新築住宅販売件数が発表になります。先週発表になった住宅着工件数が一戸建ては健闘しながらも集合住宅が足を引く形で市場の予想を大きく下回る形となったことからも、どんな内容になり、それを市場がどう受け止めるかが注目されます。現状は着工許可件数を含めて一戸建てが健闘していることで市場は踏み止まっているモラトリアル状態なので注目が集まります。

 後半28日はユーロ圏の消費者信頼感指数、翌29日は同じくユーロ圏の消費者物価指数などが発表になります。これらを踏まえてECBから何かコメントが出るか、それがなくても間違いなくユーロ相場には何らかの動きがでるはずなので、現状のユーロ再評価相場が継続されるのか、それとも違う展開になるか注目したいと思います。

 日本でも各種統計が発表になりますので、経済カレンダーをご参照ください。

■5月危機説も危惧に終わりそう

 まことしやかに囁かれながら心配された「5月危機説」ですが、少なくとも現状見えている限りでは危惧に終わりそうです。債券市場の動向もそれを示唆しているように思われます。前回「帰ってきたPER」と見出しを打ちましたが、週末現在順調に低下して39.22倍にまで下がってきています。前回帰ってきた時には130.10倍でしたからわずかな期間で4分の1近くにまで低下しました。

 これは各社の決算発表を受けて業績見通しが修正されていっているがゆえの水準訂正ですが、こうしたバリュエーション指標の決算後の修正が一巡すること、というのが市場回復への必須条件です。市場全体のPERが130倍のままでは、誰もそこから買いに出る理屈を正当化できません。各市場アナリストがセルサイドもバイサイドも併せて予想見通しを固めて、それが運用サイドの投資判断に反映されるようになって、初めて市場の方向感が出てくるというのが時間的な流れです。もちろん、アーリー・リスク・テイカーの資金はとっくに動き回っていますが、大変動の後の決算シーズンは慎重に方向感を見極めていったとしても、投資収益を上げるに充分に時間的な余裕はあるはずです。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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