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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年5月18日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/15終値)
前週末比
(5/8比)
日経平均 9,265.02 -167.81 -1.78%
NYダウ 8,268.64 -306.01 -3.57%
金利・為替 週末終値
(5/15終値)
前週末比
(5/8比)
長期金利 1.425% -0.025%
ドル/円 95.20  
ユーロ/円 128.47  

再び米国経済の回復力が問われる時

前週の総括

■米国経済抜きでは考えられない日本市場

 先週の主な市場の動きは上記の表のとおりです。前回、NY市場の動向と、トヨタ自動車の決算を市場がどのように評価し織り込むかに注目ということを申し上げましたが、結果からみると、どちらもネガティブな方へ反応しました。NY市場の動向、すなわち米国経済の動向はNY市場の株価だけを織り込むのみならず、当然にして為替市場も織り込むため、リスク・マネーの逃避先となり易い円が買われ、この一週間で対ドルが98.47円から95.20円と3.32%の円高、対ユーロでは134.24円から128.47円へと4.30%も円高に振れたことが日本株式市場の変動要因として大きなものになったと言えます。週末の金曜日のNY市場では、対ドルは一時94円70銭台、対ユーロでは127円台をつけています。

■S&P500種がTOPIXの約3倍下落

 株価の方では、日経平均株価に比べてNYダウの下落率がほぼ2倍になっていることは表からもお解りいただけますが、日本市場で東証1部全銘柄の値動きを表すといわれているTOPIX(△1.62%の下落)に相当する米国市場の指数S&P500種の下落率は△5.28%と約3倍にもなっています。

 米国市場は過度な悲観的な経済見通しが訂正される動きの中でNYダウが3月6日の安値6,469.95ドルか5月8日の高値8,587.55ドルまで約32.73%もの反騰を演じてきたわけですが、テクニカルにも一服感が出て良い頃合いになっていたところへ、いくつか冷静さを取り戻させるような材料が出たというのが現状の適当な認識だと思われます。

■更なる反騰への試金石に市場は揺れた

 材料は幾つかありましたが、大きなひとつとして、13日に発表になった4月の小売売上高(速報)が前月比0.4%減少(3月は1.3%減)と予想(前月比変わらず)より落ち込みが大きかったことが挙げられます。変動の大きい自動車を除いたベースで4月が0.5%減小(3月は1.2%減)と予想(前月比0.2%増)に反して落ち込んだことがひとつのトリガーとなりました。

 もうひとつは6月1日に迫ったGMの再建問題で11日、同社ヘンダーソンCEOが破産申請の確率が同社想定に比べ高まったと発表、国ごとに破産の可能性を検討していると言及したことが挙げられます。市場参加者の多くは、仮にGMがチャプター11を申請して同社が破綻する事態になったとしても、それは当局も含めて周到に計算されたうえでのものと期待し、考えているように見受けられますが、しかしながら前述の小売売上高などと併せ、再び米国経済の先行きに対して悲観論が頭をもたげてきたとしても、それは不思議なことではありません。何せ前週末にはS&P500指数のPERは7ヶ月ぶりの高水準に上昇しており、また指数採用企業株の34%が、既にアナリストの来年の株価目標を上回る水準になっていましたので、この動きは無理からぬことです。

■トヨタの決算評価、市場は“ネガティブ”

 8日に発表されたトヨタ自動車(7203)の決算、すなわち今期最終損益の見通しが単体ベース5,500億円の赤字、同連結ベース8,500億円の赤字という内容について、アナリスト達の評価は「慎重すぎる」というようなトーンが大きかったものの、市場の評価はやはり“ネガティブ”となったようです。私のような“トヨタLover”にとっては辛いことではありますが、現状与えられている条件だけで同社株価が決算発表前の4,000円台回復から更なる値上がりを期待するのは厳しいだろうと言わざるを得ません。次の高みへ登るには、時間ともう少しプラス材料が欲しいところです。

■ドル95円、ユーロ125円という見通し

 円高は長期的には日本経済に資する部分も多々あるかと思われますが、現下の株式市場が見通している程度の時間軸で考えるならば、指数にインパクトのある時価総額上位の銘柄群の顔ぶれを見ても、円安に動くことが株価にとってもポジティブ材料になることは明らかです。ただそれはどの水準に対してかというと、ひとつの目安となるのが決算発表時に公表される企業の収益見通しの前提となった為替水準と、その時点で市場が付けている為替水準です。ドル95円、ユーロ125円が今年度の標準的な前提水準となりましたが、それらが発表された時点ではドルはおおよそ96円から98円、ユーロは130円から133円程度という印象です。この差額が収益見通しの投資家側の糊代になり、それは瞬時に株価に織り込まれます。その意味でも先週はユーロの円高変動がより効いた感があります。

■気になる原油価格の動向

 あえて多くは触れませんが、原油価格の動向がこのところ気になっています。先週12日にはWTIで60ドルを付ける時がありました。これから米国ではガソリンの需要期を迎えるため、ここから更に原油価格が上昇するようだと、30ドル台を見てきた後だけにそのマイナス影響については気になるところです。ただチャートで見るように、それでもまだ十分安くなった水準ではあるのですが…。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートはWTI原油先物6月限の日足です。----- 60ドル台を付けたといっても、一年前に比べればまだ半値以下ではあるのですが…。>

今週のポイント

■民主党のドタバタ劇は吉と出るか、凶と出るか

 今週の注目点のひとつは民主党鳩山新代表の誕生を市場がどう受け止めるかです。解散か任期満了か、いずれにしても総選挙が近く、与党自民党が敗れれば次期日本国首相となるのは民主党の新代表ということになるわけですが、新聞などの論調にもある通り、12日の小沢前代表の辞任から僅か5日間で決まった野党第一党新代表のマニフェストは何なのか、それを市場は充分には理解していません。代表選出のプロセスをとやかく言う以前に、これで市場の政治への期待値はますます薄れてしまったと言っても過言ではないと思います。あまりに安易過ぎると思われます。

■「Yes, We can」?、「No, We can not」?

 米国の大統領選挙と国民との関わり方と、日本の首相決定のプロセスは全く違うので比較することは正しくないのかも知れません。しかし、少なくとも支持率低下の現政権が倒れて野党に政権交代するならば、日本のこれからのトップを担う野党第一党の代表選出がこれほど短期間で決まってしまったという事実は、間違いなく次期総選挙への期待値を低下させ、論点が不明慮になってしまったと言わざるを得ません。大統領予備選挙があり、また約一年掛けて戦う選挙戦の中で明らかにされるマニフェストや人柄を元に行われる米国大統領選挙と比べると、その新トップへの国民の期待値の多寡は明らかに違います。「Yes, We can」でもなく、もちろん「No, We can not」でもなく、正に「What will you do?(あなたは何をするのですか?)」なのですから。

■外国人投資家に見せなければならない

 日本人の私たちですらそうなのですから、やっと再び買い越しモードに入ってきた外国人投資家にとって、日本の政治はますます不可思議なものへと変貌していくのかもしれません。総選挙がひとつの突破口になるという見通しは後退してしまったというのが今回の民主党のドタバタ劇への印象です。自民党に有利になったとか、自民党政権が続くべきだという議論ではなく、単にこれでまた政治への興味が失われただろうということです。

■帰ってきたPER

 4月24日以降、朝刊で確認することができなくなっていた日経平均株価のPERが帰ってきました。消え去る直前(23日)の最後の数字は285.81倍、それが130.10倍で帰ってきて週末は115.52倍です。正直、この水準は高過ぎます。よく論客が口にする「欧米の株式市場のPERに比べて…」などという論を展開するつもりは全くないのですが、あの平成90年バブルの時と比べてもこの水準は高過ぎます。因みに、リーマン・ショック直後の安値では10倍を切っていますので、それと平仄を合わすのならば日経平均株価は900円台になってしまいます。それもありえません。

 この議論が不毛なことはお解りいただけると思いますが、1.4%台の長期金利水準と比べても決して高くない現状の予想配当利回り(日経平均株価採用225銘柄ベース:15日付1.64%)とも併せ、そして1倍を超えてきた平均PBRとも併せ、そう簡単にバリュエーションから株価が上昇するとは思い難くなってきています。

 同様な局面は2003年などにも見られましたが、必要なのは投資家の目線の移動です。今期、すなわち「2009年度決算が悪いことは分かった。それで2010年度はどうなるのか?」という目線の移動です。それにはもう少しの時間か、目線を先に移動させるようなインパクトのある材料が必要です。日本の総選挙がその役を担う可能性から遠のいた感じのある現状では、国内要因だけで考えるのならば、少し時間を掛けるしかないのかもしれません。となると、残る望みはやはり米国頼み…、情けなくもあります。

■インテル、入ってる、だから頑張れ!

 テクノロジー関連の話題でひとつ好材料をあげるとすれば、先週12日にインテルが気になる発言をしています。インテルとはご承知のとおり世界最大の半導体メーカーであり、パソコンの心臓部にあたるMPU(超小型演算装置)の世界市場で70%以上のシェアを誇り、故に欧州委員会から独禁法違反で制裁金を科されてしまうような企業なのですが、その同社CEOポール・オッテリーニ氏が12日のカンファレンスでいい意味で気になる発言をしています。

 それは「市場が思っているほど足元は悪くない」という意図の発言です。同社は既に前四半期においてパソコン市場はボトムアウトしたとコメントしていましたが、今回の発言は更にそれを踏み込んだものです。取り分け、「市場が思っているほど」という部分が大切なわけですが、織り込まれていないポジティブ要因がそこにはあるのかもしれません。それを裏付けるかのように、先週もNASDAQの下落率は前述のNYダウやS&P500種を下回る△3.42%であり、また大統領就任式以来の騰落率で見てもNYダウを引き続き12%以上上回るプラス16.61%であり、その間、日経平均株価は14.87%の上昇となっています。手詰まり感が強くなる前に、インテルにはぜひ頑張って欲しいものです。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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