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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年4月27日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

4月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(4/24終値)
前週末比
(4/17比)
日経平均 8,707.99 -199.59 -2.24%
NYダウ 8,076.29 -55.04 -0.68%
金利・為替 週末終値
(4/24終値)
前週末比
(4/17比)
長期金利 1.420% -0.025%
ドル/円 97.18  
ユーロ/円 128.70  

注目材料豊富、GW前のポジションは取り難い

前週の総括

■市場は膠着、ボラティリティも急低下

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。バンク・オブ・アメリカが1-3月期決算で前年同期比3.5倍の純利益を計上するも、一方で貸倒引当金は昨年12月末に比べ57%増え134億ドルとなったことなどにより、金融機関の信用損失が再び拡大するとの懸念からNY市場の株価が急落したことを受けた21日火曜日に前日比300円超急落をした日を除き、日経平均株価は値動きの少ない一週間となりました。これらの結果、日経平均株価のHV(10日間のヒストリカル・ボラティリティ)は昨年8月22日の17.818に次いで低い18.937まで低下、市場の膠着感は高まってきたと言えます。数値の絶対的な水準自体は歴史的には決して低い水準ではないのですが、添付のチャートでも見ていただける通り、少なくともこの近時の水準としては決して高くはなく、むしろこの後の展開に注意を要する水準であると言えます。高過ぎたボラティリティの水準訂正が行われている過程だとしたら良いのですが、ボラティリティの上昇は通常は原資産価格の下落を伴うので要注意です。

■米大手金融機関の決算が出揃う

 米国の大手金融機関6社の決算が前述のバンク・オブ・アメリカを含めて22日までに出揃い、最終損益ベースではモルガン・スタンレーを除いて黒字を確保しました。ただ前述した通り、市場が最終損益ではなく、その中身に神経を尖らせたことが原因となり、週末のNYダウは辛うじて8,000ドル台を回復するものの、週を通じてみると約55ドル(△0.68%)のマイナス、ドルも対円では2円以上の円高となりました。

 ただ内容の解釈として、一部には貸倒引当金の繰入額が増加したことが嫌気され、それに伴って米国景況感の見通しに再びマイナスのバイアスが掛ったとも言われていますが、やや拡大解釈のし過ぎという気がします。まずそのひとつ目の根拠は、貸倒引当金の繰入額増加は米連邦準備理事会(FRB)など米金融当局が実施している資産査定(ストレステスト)を睨んだ対応で、通常は行われない「先読み型」である点が特徴だからです。つまり事実としては貸倒引当金の繰入額は増えていますが、その根拠は従来のものとは違うベースなので、時系列の変化率はここで連続性を失っているということです。

■米大手金融機関の決算は手放しでは喜べないのも事実

 とはいえ、米国の大手金融機関6社の決算がモルガン・スタンレーを除いて黒字となったことを手放しでは喜べないのも事実です。それを市場は嫌気したと考えていますが、それこそが「負債評価益」と呼ばれるものです。市場が「この借り手に対する貸出債権は、100%は回収できない」と判断して時価評価すると、借り手側はその本来の借入額(負債)より返済すべき債務が減るという考え方で財務処理された結果が「負債評価益」なる考え方なので、これによりかさ上げされた利益を利益とみなすべきなのかは多くの議論を残すところです。金融機関自らが返済義務を棚上げして利益計上するなど、金融機関の倫理観はどうなってしまうのでしょうか?ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は24日、ストレステスト(健全性審査)について、米大手19行の大部分の銀行は規制当局が設定した基準を十分に上回る余剰資本を確保しているとの見方を示したことは評価したいと思います。

■もうひとつの議論はユーロとドル

 米国の景況感を見るうえで忘れてはならないのが為替市場の動き。どうしても対円のドルの動きだけに目が行きがちですが、今回の一連の経済変動は世界的な大変動であることは議論のないところであり、その意味でも円とドルとユーロといった、最低限主要3通貨、できればさらに英ポンドなどの動きも絡めて見ておくべきだとかねがね考えています。その意味において、ユーロが対ドルで1.300台を回復したのは週末であり、米国経済にのみ焦点を当てた悲観論は片手落ちというのが見方です。また事実、先週も日経平均株価やNYダウが週を通じて騰落率がマイナスとなる中で、NASDAQ指数は+1.27%上昇して1,694.29ptsの引け、途中1,700ptsを回復する場面も見られたのですから。

■クライスラーは何処へ行くのか?

 政府援助のタイムリミットが月末に迫ったクライスラーの動静が先週もうひとつのお騒がせ要因でした。ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)とウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)が、同社が早ければ来週にも米連邦破産法11条の適用を申請する可能性があるとそれぞれ報じる一方で、米連邦破産法7条の適用になるなどの見方も浮上しています。更には提携を継続しているイタリア・フィアットはオペルとの提携をも模索している様子、月末に向かってまだしばらくは話題に事欠かないと思われます。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティ(10日)です。----- 過去およそ10カ月、20を切ると反転しています。>

今週のポイント

■注目材料の豊富さと連休前の板挟み

 今週市場は注目材料がかなり豊富です。まず前述した通り、30日を期限にクライスラーの行方が決まるはずです。これは同社単体の問題でなく、その後に控えるGM問題にまで深く影響するからです。すでに日本の自動車部品メーカーは米国政府への保証を求める姿勢を高めていますが、多くの選択肢の中でどれが選ばれるのかは要注目です。

 経済カレンダーを参照いただきたいのですが、それに先立ち28日には4月米消費者信頼感指数が発表になります。翌29日には米連邦公開市場委員会が行われるうえに、第一四半期の米国GDP速報値が発表になります。更に言えば、30日にはECB(欧州中央銀行)の政策に影響を与えるユーロ圏の消費者物価指数や失業率が発表になりユーロが変動することが予想されます。そして1日には米ISM製造業景況感指数が発表になります。

■ストレステストの結果発表はGWの真っただ中

 そして来週4日はいよいよストレステストの結果が発表になります。本来ならばこれは次号のテーマなのですが、日本ではGWの真っただ中になるため、今週考えなければならないテーマとなります。つまりその結果でのポジションの変更ができないからです。当然今週29日も昭和の日で祝日となるため、ポジションが取り難い時を迎えます。ボラティリティは低下してきたとはいえ、通常機関投資家のメンタリティとしてはこうした状況下では買いにしても、売りにしても、どちらか一方に大きくポジションを傾けるということは避けたいと思うはずです。収益機会はこの時だけではないのですから。とすると、ファンダメンタルズだけでは説明を付け辛い市場変動をする可能性や、極めて閑散な状況に陥る可能性が高いと考えています。

■米国の住宅市場状況の確認

 今週のテーマではありませんが、ひとつ整理をしておきたいのが米国住宅市場のアップデートです。2月以降の株式市場反転のきっかけとなったのは住宅着工のみならず、新築住宅販売も、中古住宅販売も回復の兆しが見えたからですが、その次月である3月の状況が発表になっています。3月の中古住宅販売件数は前月比3%減の年率457万戸(前月は471万戸)と、予想(465万戸)を下回っていますが、新築一戸建て住宅販売は前月比0.6%減の35万6000戸(2月は35万8000戸)と、予想(33万7000戸)を上回っています。

 さらに言えば2月の住宅価格指数は1年前に比べて6.5%低下ながらも、これは過去6カ月で2番目に小さい低下率となります。また対前月比では0.7%上昇、2ヶ月連続で上昇したのは2年振りとなり、5.3%上昇した住宅ローン申請指数と併せ、低い住宅ローン金利が需要を下支えている可能性を示唆していると言えます。付け加えるならば、7か月振りに前月比プラスに転じた2月の新築住宅販売件数は、当初発表の4.7%増から8.2%増に上方修正されています。状況は改善していると見て良いと考えます。

■しつこくて申し訳ないですが、ハイブリッド・カーです

 新聞報道にもありましたが、トヨタ自動車は新型ハイブリッド車「プリウス」の生産計画を年4万台から5万台超に増やすことを発表しました。なんと発売前の先行予約がすでに6万台から7万台に達するようで、多くの意味でこのインプリケーションは投資の視点としてよくよく考えておくべきです。単なるエコカー助成金による需要の先食いと切り捨ててしまう次元は遥かに超えてきたように思われます。また生産調整による在庫減少からの生産量の復調とも意味が違うわけですから。関連産業を含めて、この影響はポジティブに大きいはずです。

■強気になるにはまだ早いとは思いますが・・・

 GWという特別な期間に突入する時でもあり、また日本の主力企業の決算発表はまだその先だという事実にも鑑み、ここで安易に強気論に転じるのは時期尚早だとは思いますが、着実に、悲観の芽は封じ込められつつあると思います。「5月危機説」という悲観論に乗って慎重論を唱えた方が“マーケット・コメントとして無難”だとも思いますが、少なくともダウンサイド・リスクはかなり限定されてきていると考えられるとみています。

 ただその一方でアップサイドがどの程度あるかといえば、事由として挙げられるものがそう多くはないのも事実であり、上値もそうは高くないかもしれません。しかし、もしこの見通しが正しいとすれば、「5月危機説」を見込んで投資を見送ってきた資金や、あるいはショートを積んでいるポジションがGW以降に巻き返しにかかる可能性が高くなってきているとも言えます。休みが長くなる分は慎重であるべきだとは思いますが、投資機会だけは見逃さないようにしたいものです。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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