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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年4月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

4月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(4/10終値)
前週末比
(4/3比)
日経平均 8,964.11 +214.27 +2.45%
NYダウ 8,083.38 +65.79 +0.82%
金利・為替 週末終値
(4/10終値)
前週末比
(4/3比)
長期金利 1.450% +0.030%
ドル/円 100.23  
ユーロ/円 132.18  

景気回復期待と売り方悲観論のせめぎ合いが続く

前週の総括

■3カ月ぶりの日経平均株価9,000円台回復

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。終値はわずかに9,000円を割り込みましたが、金曜日は寄り付き直後から日経平均株価が9,000円台を回復、これは1月9日より約3か月振りのことです。しかしながら2009年3月期の連結最終損益が3,900億円の赤字になることを発表し、同時に今夏にも普通株で最大8,000億円もの普通株による公募増資を行う予定を発表した三井住友フィナンシャルグループ(8316)の株価がストップ安となったことが銀行株全般の足を引っ張り、大引けまでは9,000円台の水準を保てませんでした。この手の話題は「売り方」と呼ばれる、すなわちショート・ポジションで収益を上げる方法を志向する一部のヘッジファンドの運用者達には格好の“ネタ”にもされます。三井住友フィナンシャルグループがこの時期に普通株での増資発表、他に方法はなかったのかと「?マーク」が浮かばなくもありません。

■米国株市場は好材料が続く

 一方米国株式市場では、9日付NYタイムズ紙が「検査中の銀行に関して言えば、考えられているより状態は良好である。米政府によるストレステストの対象となっている米金融機関19社がすべて、審査に合格する見通しだ」と報じたり、またカンザスシティー連銀のホーニグ総裁が9日「大手米銀に対する政府のストレステスト(健全性審査)の結果、そのほとんどが一段の公的資金注入の必要性はないと判断される」との見解を示したりと、銀行セクターの好材料が市場好転の材料となったのが対照的です。日本市場が9日木曜日に321円の上昇を示したのは、この一報に触れたからでもあるからです。

 そして翌日には米大手銀のウェルズ・ファーゴが「四半期決算としては過去最高水準の利益額」となる純利益約30億ドルの見通しを発表しています。同銀が3カ月前に買収したワコビアの業績が予想を上回ったことが寄与したようで、前年同期は純利益が20億ドルでしたから1.5倍になりました。金融危機の発端となった米国と、「蜂が刺した程度」と、たかをくくっていた邦銀との攻守が逆転して来たのかも知れません。

■追加経済対策が発表されました

 10日に財政支出15兆4千億円、事業規模56兆8千億円となる追加経済対策が発表されました。これは先週行われたG20金融サミットで米国が主張した財政支出の目安となるGDPの2%レベルを超える3%に届く水準となるもので、一定の評価はできるものの、内容を細かく精査していくと国債増発による長期金利上昇のリスクを冒してまでも掲げる必要性のある項目なのかと疑問を抱かざるを得ないものも含まれており、これらを市場が今後どう評価していくかは予断を許さないと思います。前回指摘した通り「長期金利の上昇傾向」によるイールド・カーブのスティープ化は、この先日銀の舵取り範囲をより狭める可能性があります。

■日銀は現状の厳しい状況判断を変えていない

 7日に行われた日銀の金融政策決定会合で白川総裁は「景気は1月時点と比較して下振れしている可能性が高い」と指摘し、4月末に公表する見通しで更に下方修正する可能性を示唆しました。日銀が気にしているのは「5月危機」とも懸念されている企業の資金繰り問題ですが、すでに政策金利の誘導目標は0.1%とほぼ下げ余地のない水準であり、国債増発による債券市場の荷もたれ感による長期金利の上昇がある中でできる施策の選択肢が限られてきているということが問題として挙げられます。中央銀行のバランスシートが肥大化すれば、かねてより市場がFRBの状態に危惧し「基軸通貨ドルの暴落」と論じていたのと同じ道を辿ることになることも見えて来なくはありません。

■円が100円台を回復!?

 およそ5カ月振りに円が1ドル100円台を回復しました。これを喜ぶべきなのかどうかは前述の状況と併せて議論の分かれるところです。今回の世界的な金融危機が進展する中で、日米欧の主要通貨の中で、少なくともリーマン・ショックの直後までは「円が一番安全」という神話が成り立っていました。円は主要通貨に対してほぼ全面高となっていましたが、やはりオバマ新政権が誕生した時を底(頂点?)に明確に反転しています(チャート参照)。金価格の変動と併せて諸説ありましたが、ユーロとドルとの関係なども併せて考えても、やはりかねてから申し上げてきたように、一時期ヒステリックなほどに騒がれ過ぎていた米国不信説が正される流れになってきているように思われます。

■中国株など新興国株が堅調

 正直ベース、中国市場がここまで堅調に推移するとは予想していませんでした。週末現在で中国上海総合指数は年初来34.24%の上昇、中国深セン総合指数は48.35%の上昇と、とてもそれを無視していられる段階ではなくなってきました。2枚目のチャートとして添付した中国上海総合指数の週足チャートをご覧いただければ明らかですが、昨年10月末から11月初めの水準を底値に綺麗に切り返し局面に入っていると見てとれます。中国政府の積極的な景気刺激策が功を奏し、市場がそれを信頼してことを示していることの表れかと思われます。実質的にも、この時期が中国が米国に対する最大の債権国へとなった時であり、やはり大きな時代の節目があったと捉えて良いものと考えます。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャート1枚目はドル円の日足1年分です。----- 昨年12月中旬と、1月20日のオバマ大統領就任式をダブル・ボトムに切り返してきているのが明らかです。>


(出典:Bloomberg)

<今週のチャート2枚目は中国上海総合指数の週足5年分です。----- リーマン・ショック後の急落を底値に徐々に切り替えしています。>

今週のポイント

■日経平均株価9,000円台回復と定着、その期待と不安

 やっと日経平均株価が3カ月振りに9,000円台を回復する局面を見ましたが、滞留時間は約40分間程度と極めて短時間でした。オプションSQと絡んで寄り付きで前日比+125円での達成、その後はその余波とも考えられますので、日経平均株価9,000円台回復と声高に叫ぶのは慎重でいないとならないのかも知れません。ただ楽天証券のMarket Speedで日経平均株価の「個別チャート」に入り、テクニカルチャート「価格帯別出来高」で見ていただければ明らかなのですが、この現状水準を超えると出来高的には12,000円ゾーンまでかなり薄くなり、受給的には真空地帯を駈けのぼることが可能ともいえます。また一目均衡表で見ても、現状は雲の上にいると先週申し上げました。ただ一方で、故にこの水準になると売りのポジション組成も増えて来ているともいえます。

■バリュエーション的な議論ではどうか?

 株価が急落した局面では、PBRが1倍割れして極端に解散価値を下回る水準に放置されるのはおかしいというバリュエーションからの議論が可能でした。株価は本来「解散価値+将来の期待収益」の和であるべきという議論からしても、ベースとなる解散価値を大きく下回るというのは、この先に最終損益が赤字となり純資産価値が棄損し続けることを想定しないと正当化できないということがその論拠でした。

 しかし残念ながら日経平均株価算出根拠なる採用225銘柄の週末4月10日現在のPBRは前期基準で1.01倍、東証全銘柄に拡大すると0.96倍とわずかにまだ1倍を下回るものの、09年3月期の決算が出揃った段階でこの数字は上がることはあれど、下がることは考えがたいのが現状だとすれば、ここまでの株価回復を支えてきたバリュエーション議論はその論拠を失うことになります。つまり最終利益赤字企業が数多あるということは、BPSが減るからです。PER(株価収益率)での議論がほぼ無意味な水準になっていることはご承知の通りです。

■代表銘柄としてトヨタ自動車(7203)で検証

 TOPIXで2位の三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)の2.76%に大きく差をつけ、4.64%と堂々の第1位の時価総額を示すトヨタ自動車をひとつの例として考え見ると、同社の株価は直近の安値となった3月12日から約4割の上昇となって週末終値は3910円です。この段階での連結ベースのPBRは1.03倍。つまり解散価値にほぼ等しい訳ですが、9年3月期の最終損益は赤字です。4月12日の朝刊に掲載された観測記事によれば今期10年3月期も営業損益が赤字とのことになれば、今期も最終損益で赤字を計上する可能性を否定はできません。だとすれば、PBRからの議論ではこの先の株価上昇を裏付けることは難しくなります。

 ただ一方で、そうした収益予想はまずマクロ環境の想定前提があり、また為替など、前提条件がいくつも含まれているのも事実です。たとえば記事では為替がドル円95円、ユーロも円高を見込むとありますが、ちなみにドル円の足元は100円台です。恐らく全世界の市場見通しについてもかなりコンサーバティブな内容になっていると予想するに難くありません。

 前述した通り、中国市場は私自身の反省も含めて、予想以上に回復しているようでもあり、また低炭素革命の中核となるハイブリッド・カーなどの市場の伸びや収益インパクトはポジティブに裏切られる可能性を多分に秘めていると言えます。こうした綱引きがこの先繰り広げられるだろうと予想されます。

■米国発のニュースには要注意

 最後に今週の話題となるであろうことのポイントとして、14日発表のゴールドマンサックスの決算など、米国発のニュースには注目すべきものが多々あります。週の半ばにはベージュ・ブックが発表になり、またその翌日には住宅着工が発表になります。詳しくは経済カレンダーをご参照いただければと思いますが、決算発表とあわせ注目していきたいと思います。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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