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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年3月30日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(3/27終値)
前週末比
(3/20比)
日経平均 8,626.97 +681.01 +8.57%
NYダウ 7,776.18 +497.80 +6.84%
金利・為替 週末終値
(3/27終値)
前週末比
(3/20比)
長期金利 1.330% +0.075%
ドル/円 97.86  
ユーロ/円 130.11  

注)日経平均・長期金利の前々週末終値は、3/19の終値

短期的にテクニカルは過熱感あるも、状況はかなり改善してきた

前週の総括

■3週間連騰、ブル相場入りとも言えるほど

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は前週末対比で+8.57%の上昇、NYダウの上昇率も+6.84%、そして共に3週連続の上昇ということになります。安値からの上昇率は20%を超え、ブル相場入りを示唆するほどでもありますが、テクニカルには過熱感を指摘する声も出始めるほどです。市場に喧伝されていたヘッジファンドの解約売りはどこに行ってしまったのでしょうか?前回指摘した通り、運用当事者の現場以外に事前に解るわけのない情報との区分けは、今後も投資判断上の大事な区分けとなります。

■米国住宅市場に底打ち感が台頭

 先週の注目材料として、米国の新築と中古の住宅販売状況の発表を前回指摘しておきましたが、23日に発表になった2月の中古住宅販売件数は季節調節済みの年率換算で前月に比べて5.1%の増加、25日に発表になった新築一戸建て住宅の販売件数も季節調節済みの年率換算で4.7%増加と共に市場予想を上回りながらプラスに転じました。前月比プラスは前者が2カ月振りで後者が7カ月振りです。更に、米連邦住宅金融庁(FHFA)が24日に発表した1月の全米住宅価格指数は季節調整済みで前月比プラス1.7%、これは11カ月ぶりの出来事で、上げ幅は統計開始以来の最大値となっています。

 先々週、2月の住宅着工件数がやはり季節調節済みの年率換算でプラス22%となったことから、米国住宅市場が最悪期を脱した可能性に、市場の悲観論の論拠に綻びが出始めていました(最新のブログもご参照ください)が、かなりその確度は高まってきたと言えます。着工件数も、販売件数も、そして価格指数も前月比プラスということになれば、金融機関の不良債権の増加(オフバランス化されているものは証券化商品の価値下落)に歯止めがかかるというものです。

 更に付け加えるならば、20日までの1週間の住宅ローン申請指数は1159.4と前の週の876.9から32%上昇しました。金利低下に伴い借り換えと購入の両指数が上昇したことを受け3週連続のプラスとなっています。

■その他の米経済指標にも堅調なものが多い

 2月の米製造業耐久財受注額は前月比3.4%増(1月は7.3%減)と、これまた予想(2.5%減)に反してプラスとなりましたが、これは過去1年余りで最大の増加率です。プラスは7カ月ぶりです。3月のロイター・ミシガン大学消費者マインド指数(確定値)も57.3(速報値は56.6)と予想(56.8)を上回りました。3月の指数を項目別でみると、今後6カ月間の先行き景況感を示す指数は53.5(速報値53.0)と前月の50.5を上回っています。もうひとつ付け加えるならば、米商務省が27日に発表した2月の個人消費支出も季節調節済みの年率換算でプラス0.2%増加で2カ月連続の上昇です。

■ガイトナー・プラン(官民投資プログラム)も市場予想以上の出来

 2月にガイトナー財務長官が発表した不良資産の買い取りプログラムは、その具体性が見えなかったこともあり、市場からは厳しい批判を受け、悲観論の勢いを煽る結果となりましたが、23日に発表された最大1兆ドル規模の公的資金拠出を伴うガイトナー・プランの詳細は市場の予想を上回る出来栄えだったと言えます。それはあらかじめ民間サイドともかなり打ち合わせされた具体性のある内容であり、すでに複数の運用会社が参加する意思表示をしています。

■ドル売りは短期で収束、一方、円が売られる

 FRBが米国債を3,000億ドル分購入すると発表したことで財政規律の問題などを挙げ、ドルが急落するという視点も直後に一旦は浮上しましたが、週末比較でみると、ドルは対ユーロで1.35740から1.32960へ上昇(数値が低くなるほどドル高)、対円でも95.78円から97.86円へ上昇しています。この流れで米国長期金利は低下して金利差は縮小していますから、印象としては予想以上にドルが強いと見ることができます。米国債の最大保有者は現在中国ですが、金利低下は債券価格の上昇を伴い、ドルが急落するまでもなく強いならばなおのこと、最大債権国にとっての国益にも適っているといえ、ここまでは多くの点で市場の予想をポジティブに裏切っているとも言えます。

■日本の政治のダッチロールは続く

 本件についてはあまりコメントをしたくありませんが、週末の新聞にも紹介されていたように、日本の政治の状況は外国人投資家に対して、少なくともポジティブな印象を与える状況にはなっていません。外国メディアの取り上げ方は与野党双方に対して厳しいものがあります。また、北朝鮮の弾道ミサイル問題に対する社民党党首の参院予算委員会での質疑が野党同士でさえ失笑を買うなど、与野党共に多くの問題が敵失によるものばかりで、外国人投資家からポジティブ評価を貰うには日本の政治状況は程遠い感じが続いています。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは米国ナスダック総合株価指数の日足チャートです。----- このところの綺麗な戻しに着目です。精緻なテクニカル・アナリストからは異論を唱えられるかもしれませんが、ダブル・ボトムを描いているように見えます。1600ptsを超えて来ると、面白い展開になるような気がします。>

今週のポイント

■G20金融サミット、日銀短観、ECB政策委員会などイベント目白押し

 「年度末のドレッシング(お化粧買い)があるかないか?」、などという話題は取るに足らない問題と霞むほど、今週はイベントが目白押しです。G20では財政政策でどこまで協調体制が醸成されて景気刺激がなされるか、それに伴い金融システムがまともに再稼働するようになるのか、そして金融危機再発防止に向けたどのような枠組みが議論されるかなどが注目点です。日銀短観はG20の前日に発表になりますが、それをも踏まえて、日本がどこまで踏み込んだ話ができるのかは注目したいところです。

 翌2日、すなわちG20当日にはECBの定例政策委員会が開催されます。市場は0.5%の利下げを予想していますが、ECBは財政規律を重んじており、巨額の財政出動に走っている米国や中国とどこまで歩調を合わせられるのか、それに合わせてユーロがどう動くかが注目されます。現状からユーロが売られることになると、日本株式市場にとってはマイナス要因には違いありません。

■NASDAQとハイテク産業に光明が見える

 オバマ民主党政権誕生がNASDAQやハイテク産業にポジティブな要因になるということはかねてから何度もお話してきたと思いますが、今週4週間ぶりにNYダウをわずかにアンダー・パフォームしたとはいえ、NASDAQの好調さは、大統領就任時点を起点にしてNYダウが未だにマイナス2.18%と低迷している一方で、NASDAQはすでにプラス7.24%となっていることからも明らかです。時代のサイクルはここで一旦インフラやハードウェア(部品系)の時代に戻る可能性が高いと思っています。

  その論拠の一つが半導体DRAMスポット価格の底打ちです。ドイツ・キマンダ社の破綻や台湾メーカーなどの生産抑制などもあり、DRAMのスポット価格が急上昇しています。直近安値からのリバウンドはおよそ30%。パソコンの販売実績の数値は過去の実績値であり、スポット価格は在庫水準と将来の生産を見ていますので、どちらが株価形成に重要かといえば当然後者ということになります。

■ハイブリッド・カー・ブームもハイテク産業にとっては追い風

 トヨタとホンダのデッドヒートが予想されるハイブリッド・カー・ブームに、日産も参戦の狼煙を上げてきました。車載半導体が注目されるようになって久しく、また自動車産業が急ブレーキを踏んだことが電機各社の収益計画に大きな痛手となったのは事実ですが、今までの車載半導体の主たる利用目的は安全性であったり、快適性であったりする部分がメインです。

 しかし、駆動システムそのものの大変革であるハイブリッド・カーは、例えば電圧制御一つを取って見てもレベルの違う段階に進みます。例えば、解り易い例で説明すると、トヨタ・アルファードに搭載される100V用コンセント、従来型エンジンの車両のそれはPC利用や携帯の充電に供するのが妥当なレベルですが、ハイブリッド・システム搭載の同型車両のそれではヘアー・ドライヤーが使えます。車で髪の毛を乾かす必要性があるかどうかは別にして、そのキャパシティの違いから、どれだけ電装系の基本が違うかお分かりいただけると思います。つまり、電装系のニーズのレベルが変わるということです。

■政府の経済成長戦略原案、低炭素革命にも注目

 27日に明らかになった政府が4月にまとめる経済成長戦略の原案は注目に値すると思います。前述のハイブリッド・カーに対する補助金政策もそのひとつですが、もうひとつの目玉は太陽光発電などの低炭素革命に関わるものです。ただ太陽光発電というストーリーそのものはすでにかなり市場に織り込まれ、材料としての新鮮味は色褪せている面があると思われますが、燃料電池とのハイブリッド・システムという面ではまだまだこれからと思われます。

 弊社の新春講演会でも燃料電池を使った家庭用コージェネレーション・システムについて概説を申し上げましたが、エネルギー効率の観点から見ても、極めて合理的なものであり、米国でも力点が置かれているスマート・グリッド(電力供給網)の流れとも併せて、日本企業に一日の長が見られるテーマとも思われます。

■年金運用の株式投資比率引き下げは底値圏を示唆

 このところGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を含む多くの年金資金の来年度運用方針に関して、株式投資比率を引き下げるという話が聞こえてきますが、経験則からも、これらはほぼ市場の底値圏を示唆するものだと言っても構わないだろうと思われます。

 つまり投資判断のメカニズムが巨大で組織的になればなるほど、それは順張り型運用にならざるを得ず、先頭を切って、ある程度のリスクを取っての逆張り型の投資判断は行い得ないからだということです。とりわけ、大きな仕組みを決定するアセット・アロケーションの判断については、組織的に決定するプロセスを踏めば踏むほど、それは万人が認め易い論拠が列挙されるような内容にならざるを得ません。

 しかし、市場の神様はご承知の通り、マジョリティ(多数意見)にではなく、マイノリティ(少数意見)に微笑みます。正に運用会社の組織化とパフォーマンス悪化のジレンマがそこにあるわけですが、合理的に株式投資比率を引き下げるロジックに説明がつく時こそ・・・、ということになります。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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