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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年3月23日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(3/20終値)
前週末比
(3/13比)
日経平均 7,945.96 +376.68 +4.98%
NYダウ 7,278.38 +54.40 +0.75%
金利・為替 週末終値
(3/20終値)
前週末比
(3/13比)
長期金利 1.255% -0.060%
ドル/円 95.78  
ユーロ/円 130.01  

注)日経平均・長期金利の週末終値は、3/19の終値

ユーロが勝つか、ドルが勝つか、それが問題だ!

前週の総括

■日米中央銀行に動き、為替市場が動く

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価が前週末対比で+4.98%の上昇の一方で、NYダウの上昇率がわずか+0.75%に留まるひとつの背景は、ご承知の通り、日本市場は金曜日が祝日でクローズとなる中で、米国市場は通常通りに金曜日まで取引があったという違いを反映しているからです。報道されている通り、日銀が政策決定会合をする一方で、米国FRBもFOMCを開催するなど、今週は中央銀行の政策決定にいろいろな動きがありました。

■米国長期金利の下落ほどに、日本の長期金利は下がらず

 米国FOMCでFRBが米国債を3,000億ドル分購入することに併せ、住宅ローン担保証券(MBS)などの購入拡大を決定したことが好感され、米国では長期金利が低下(債券が買われる)しました。“基軸通貨ドル暴落”というロジックの根幹にはドルへの不信任があり、もし、それが正しいのならば米国債の需要、とりわけ長期債の需要は落ちることを意味しますから、今回のFRBの決定を受けて長期債が買われて長期金利が低下したことは、米国の長期債務に対する信任が失われていないということを意味しており、世界がリセッションに陥るという考え方が変わりつつあることの証左とも言えます。

 ただ、一方では通常米国債券市場の動きを見て、日本の債券市場も同じ方向に動く傾向が強かったにもかかわらず、今回はその連動が薄れ、日本の長期金利はそれほど下がりませんでした。表に示した通り、日本の長期金利も-0.06%の下落となって1.255%となっていますが、この水準は2月中旬の水準に戻っただけなのでたいしたことのない戻りといえます。

■日米長期金利差に着目、フェーズが変わった

 ただこの非連動のおかげで日米の長期金利差が縮小し、その結果として円高ドル安へ動いています。ただこれは前述の通り、「基軸通貨ドル暴落」と言われるようなドルへの信任に対する悲観的な見通しのもとにあるものではありません。今回は素直に金利差に着目して為替市場が動いたことをむしろ評価すべきように思います。つまり、ドルの信認・不信任というフェーズが次の段階に変わったということです。たとえば、原油市場ではこれを裏付けるように、世界的なリセッション懸念が後退し、原油需要の回復を見込み、OPECがいくら減産を決めても値上がりしなかった状況に変化が生じ、週後半は50ドル台を回復しています。

■金利差で為替市場が動くことは正常な変化です

 先週、スイス国立銀行のファインプレイでユーロが上昇するようになったと書きましたが、今回前述の通りの流れでドル金利が低下したことを受けて、ユーロも対ドルで上昇しています。このところ欧州リスクの顕在化を受けて一方的にユーロは下落していましたから、これもある大きなひとつの変化になっているように思われます。つまり“信用リスク”を見る段階から金利差を見る段階に発展してきたということです。ただ中央銀行の政策決定による短期金利の動向ではなく、長期金利差に市場が着目しているところに、まだ病み上がり的な状況を見て取れます。ただこれはいずれにしてもポジティブな変化だと受け止めています。

■NASDAQの動きに注目

 日本の株式市場に日経平均株価もあれば、TOPIXも東証マザースもJASDAQ総合指数もあるように、米国市場にも多くの株価指数、インデックスがあることはご承知の通りですが、その代表格はNYダウと、S&P500、そしてNASDAQです。その特徴は先般来ブログなどでもご紹介した通りですが、数ある主力市場の株価指数の中でNASDAQが先駆してオバマ大統領の就任時のレベルを回復しました。NYダウとNASDAQの本期間の乖離率はすでに10%近い水準になっています。この意味はよく考えておく必要があると思います。IBMがサン・マイクロシステムズ買収に動き出すなど、業界再編の動きも顕著になってきました。

■定昇の取り扱いで当該企業の現状とポリシーが見える

 先週トヨタが定昇を維持することを賞賛しましたが、シャープや東芝のように一時凍結のところもあれば、ソニーのように1年間凍結するところもあるなど、その取り扱いに跛行色が出てきました。日本を代表するトップブランド企業のトヨタとソニーが真反対の結論を下したところは、実に両社のカルチャーの違いを示しており、面白い結果だと思います。

 創業者の血縁に大政奉還を決めたトヨタと、ハワード・ストリンガー氏にトップ権力を集中させる決断をしたソニーという面でも、明らかな違いがあります。その意味では一時凍結という企業の方が煮え切らないカルチャーがあるように思ってしまうのは気のせいでしょうか? 今後の両者のビジネス展開にはますます注目していきたいと思っています。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートはドル・ユーロのチャートです。----- ユーロがダブルボトムをつけて切り替えしているようにも見えます。ただ週末は陽線で終わらず陰線です。為替市場の動きから目が離せません。>

今週のポイント

■年度内受渡し最終取引日を迎える週

 実際の年度末は来週ですが、株式などの月内受渡し最終取引日は今週です。その意味では需給要因で振られる可能性が高いと言えます。よく言われたように、ヘッジファンドの解約云々があるのだとすれば、また機関投資家などのファンドの解約があるとすれば、需給要因でファンダメンタルズとはかけ離れて市場が荒れるのが今週となるはずです。

 ただ実際には当日受渡しなどの特殊取引に応じる証券会社などもあり、そうしたすべてを利用するのがヘッジファンド・マネジャーの腕の見せ所でもありますので、素直にカレンダーだけを気にしていれば良いというものでもないのかもしれませんが・・・。またそういう解説も出て来るかも知れません。そう、実際のところは運用現場の当事者以外には何も判らないというのが本当なんです。誰も手の内を他人に晒したりはしないのですから。

■米国住宅市場に変化の兆しか?

 先週の株式市場、とりわけ米国株式市場が大きく反応したひとつの材料は、米商務省が17日に発表した2月の住宅着工件数が季節調整済みの年率換算で前月比22.2%の上昇と8カ月ぶりに前月比を上回ったことです。今回の金融危機の最初の引き金は米国住宅市場の問題、つまりサブプライム・ローン問題にあり、多くの論調が住宅価格の下げ止まりがないと問題は解決しないとしている以上、この変化を市場が好感して上昇するのも無理からぬことです。売れないから建てない、建てないから売れないという悪循環に終止符が打てるなら・・・。

■今週は住宅販売件数が発表になる

 今週は先週の着工件数に対し、新築と中古共に2月の住宅販売件数が発表になります。もし市場の予想を上回るものが発表になれば、これはかなりなポジティブ要因と考えられます。少なくとも、基軸通貨ドル暴落論と同じく、住宅市場が好転しない限り金融危機は終わらないなどとする悲観論者の論拠がひとつ消えるからです。当然、販売件数が市場の予想を下回るようであると、今度は逆に「また住宅在庫が膨らんで更なる価格低下圧力に繋がる」という論陣を張りやすい材料を提供することになってしまいます。その意味でも今週の住宅関連統計は要注目材料のひとつです。

■金利と為替に注目

 いずれにしてもこの2008年年度末、日銀が17日に発表した異例の銀行支援策などを含めて、万策尽くして企業の資金繰りなどを危惧している以上、3月末日を挟んで金融各市場の状況はカレンダーを一枚めくるだけとは違う意味合いをもっているはずです。この段階でいたずらに決め打ちするぐらいならば、ポジション・リスクを少し減らしておくというのが良いかも知れません。もし自分が運用ポジションを持っている立場だとした場合、そうした投資判断をする可能性が高いです。

 ただ、一方で今週あたりから金利と為替の動きには細心の注意を払います。前述の通り、金利や為替の動きが新しいフェーズに入る兆候を示しています。新年度後の投資判断を的確に行うためにも、金利や為替市場の言うことに耳を傾けておく必要があります。ただし、それはポジショントークの多く入る市場コメントではなく、淡々と各市場の変動を見ておくという意味です。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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