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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年2月23日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(2/20終値)
前週末比
(2/13比)
日経平均 7,416.38 -363.02 -4.67%
NYダウ 7,365.67 -484.74 -6.17%
金利・為替 週末終値
(2/20終値)
前週末比
(2/13比)
長期金利 1.270% -0.010%
ドル/円 93.17  
ユーロ/円 119.70  

悲観が正しいか?楽観が正しいか? 答えは歴史になってから判明する

前週の総括

■景気悪化をあらためて認識! でも…

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。週初に国内では2008年10-12月期の国内総生産(GDP)が前期比年率でマイナス12.7%減と、第一次石油危機以来の大きな落ち込みとなったことが発表された中で1週間がスタートしました。もちろんこれは酷い数値であり、メディアも評論家もこぞって悲観的論調を展開しましたが、月曜日の市場反応は日経平均株価が約30円下落しただけです。実はTOPIXは逆にプラス5.51pts上昇しました。

■米国市場がお休みだったからなのか?

 この日、米国市場はプレジデンシャルデー(大統領記念日)で市場は休場、翌日本時間17日も時差の関係で外国人投資家の参戦が少ないからなのか出来高は落ち込み、売買代金でみると2日間とも1兆円台という体たらくでした。だからという見方もできますが、市場の目はやはり日本国内にではなく米国発の材料に向いていたというのが正しい理解のように思われます。

■最速可決の米景気対策法案など米国市場の反応を待つ

 現地時間前々週末(2月13日)、つまり日本の週末に米上下両院で約7,870億ドルの景気対策修正法案が大統領就任後わずか3週間で最速可決され、一方でG7が閉幕して共同声明を発表したわけですが、これを米国市場がどう織り込むのかが米国市場休場の関係で読み取れずに日本市場はスタートしました。更に言えば、17日にはGM再建策が発表されるとあってその内容を見極めたいというムードも濃く、市場は動けなかったというのが実情かも知れません。この間、中川前財務相のろれつが回らない事件などがありましたが、今週の市場の動きを支配したのはやはり米国市場の動きだったと言わざるを得ないと思います。

■しかし、米国は欧州を気にしていた

  その米国市場はプレジデンシャルデー明けの17日、対前日比でマイナス297ドルと大幅に下落しましたが、実は市場が意識したのは欧州の銀行の財務事情。ムーディーズが17日公表した欧州新興国(特に東欧)の銀行セクターに関する特別報告書の中で、景気後退が他の地域より深刻化する恐れがあるため、同地域の銀行、および同地域に子会社を持つ西欧の銀行の財務力格付けが圧力にさらされていると警告したことが嫌気されたというのが内容です。事実、それまで為替市場での通貨の強さは「円⇒ドル⇒ユーロ」の順番でしたが、今週「ドル⇒円⇒ユーロ」という順番に変わり、ドルとユーロの関係でユーロが再び1.25台を付ける運びとなり、この欧州経済・金融への不安感が米国銀行株下落の大きな要因になり、故にNYダウやS&P500が大きく下落したという見方ができます。

■GMは破綻? 一部米銀は国有化?

 ただその一方で、確かにGM再建策も危機感を煽ったという面ももちろん否めません。今GMの新車を買うと、10万円はUAWの退職者向け健康保険金を払うことになると言われるほどUAW向けのコストはGMをはじめとするビッグスリーの収益を圧迫しているわけですが、17日期日のGM再建策の中で、UAWとの交渉は決裂しており、この問題の打開策は出せず、にわかにGMのチャプター11(米連邦倒産法第11章)適用申請が真実味を帯びてきました。プリパッケージなどの話も出ていますが、少なくとも多くの金融機関にとってGM向け債権の不良化は痛手であり、GMの株価が1ドル台半ばまで下落した(引けは1.77ドル)ことも、シティが1.61ドル(引けは1.95ドル)、バンカメが2.53ドル(引けは3.79ドル)となったことも大きな流れの中ではそう不思議なことではないかも知れません。

 のちにホワイトハウスは国有化を強く否定していますが、クリストファー・ドッド米上院銀行委員長(民主党)が「一部の銀行は、短期的に国有化する必要があるかもしれない」と発言されたことは事実であり、オバマ大統領の経済回復諮問会議の議長であるボルカー氏までが2007年12月に始まった景気下降局面について「米国や海外での典型的なリセッション(景気後退)の類ではない」と発言し、「信用市場てこ入れに向けた米政府や金融当局の取り組みは、インフレリスクを一時的に緩和するに過ぎない」とも警告するなどしたことも悲観の流れの火に油を注ぐ結果になったのかも知れません。

■ロイター・ジェフリースCRB指数は7年ぶり安値、金は1,000ドル超え

  そんな中、国際商品の総合的な値動きを示すと言われるロイター・ジェフリースCRB指数は2002年の水準まで低下、一方金価格は週末のNYで一時1,000ドル/OZを超える水準まで上昇しています。添付の2枚のチャートを見ていただければ一目瞭然ですが、昨年夏頃までの動きは長く両者ともほぼ似通っているにもかかわらず、ここ半年は何の相関性も見出せない状況になっています。後述しますが、この意味はよく検討する必要があると思います。

■原油のアジア・プレミアム、バルチック海運指数リバウンドの意味するところ

  原油は、WTI原油先物価格は週半ばに最安値34.62ドルまで更に低下しましたが、週末は38.94ドル。来週から限月交代します。一方、新聞でも報道されていますが、アジア向け原油には底堅い需要を背景に「アジア・プレミアム」がついていると言われています。このインプリケーションについてもよく考えてみる必要があると思います。バルチック海運指数もこのところ上昇しており、週末は2,099.00と直近約4カ月の最高値をつけて週末を迎えていますので。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャート1枚目は過去8年間のロイター・ジェフリースCRB指数です。----- 昨年6月末を頂点としてそそり立つアイガーの北壁のように急落して7年前の水準まで逆戻りしたことが解ります>


(出典:Bloomberg)

<今週2枚目のチャートは過去8年間の金価格の推移です。------CRB指数の構成要素であるにもかかわらず、昨年6月末を下回るどころか上回ってきました>

今週のポイント

■経済統計発表が目白押しで要注意

  今週は先週と異なり、日米欧揃って経済統計発表が目白押しの1週間となります。詳細は経済研究所の「経済カレンダー」をご覧ください。更にこの時期はもう例年同じことの繰り返しなのですが、年度末に向かって投資環境以外の要因、つまり資金需給が読み難くなる時期でもあり、どっちにどう転んでもおかしくない状況になります。値惚れで短期のポジションを組むのは売りでも買いでもリスクが高くなる時ですので要注意です。

■金市場はバブルの可能性が高い

  世界的な金融恐慌の中で、通貨そのものの価値が信頼を失っているがために金に投資資金が回っているというロジックも頷けますし、事実そうした背景からETFなどの残高も積み上がって“実需?”も増えていると言えるのかも知れません。金価格は1,200ドルを目指すといったレポートを見たこともありますが、原油価格が200ドルを目指すといったレポートを見たことも思い出されます。

 前述したロイター・ジェフリースCRB指数の構成要素は金を含む原油、燃料油、無鉛ガソリン、天然ガス、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、とうもろこし、大豆、小麦、綿花、牛、豚、ココア、コーヒー、オレンジジュース、砂糖の19品目となっています。金はあくまでもその中の構成要素の一つでしかありませんから、全体指数が下落する中で1,000ドルを超える真逆の動きをしてもおかしくないということも可能だと思いますが、まず2枚の8年間分のチャートはよく見ていただいた方が良いと思われます。相関性は一時的になくなっただけなのか、永続的なものなのか…。

■悪い話ばかりではありません

  先週、スウェーデンの伝統ある自動車メーカーのSAABが破綻しました。GMがこれ以上支えきれなくなったからであり、同様にFordの傘下にあるボルボも先の見えない状況にあると言われています。悪い話を挙げたら枚挙に暇がありません。

  しかし一方で、ホンダが6日に発売したハイブリッドカー「インサイト」はわずか11日間で月間販売目標の2倍に当たる11,000台を受注し、この勢いだと2月は目標の3倍に達するとの見通しを発表しています。例年でも物が売れなくなると言われる2月にこの数値、ポジティブに評価していい話だと思います。消費者は購入価値があると思われるものには財布の紐を緩めるということが証明されています。

  同様な話で言えば、パソコンも売れています。いわゆる500ドルパソコン、日本で言うなら50,000円パソコンと呼ばれるネットPCのことですが、これが市場を牽引し3年振りの出荷台数の増加になっています。何を消費者が求めているのか? そして、50,000円のパソコンで何ができるのか? 恐らくそのパフォーマンスにはポジティブに驚きがあるはずです。

  トヨタの社債発行も予定の2倍の2,000億円の規模で成功しました。これもニーズのあるところに供給が合えば、資金は待機しているということの表れではないでしょうか?

  米国株式市場が6年振り、7年振りの安値と言われていますが、短期的な視点ではありますが、NASDAQ総合株価指数は先週末現在で1月20日の大統領就任式のあったレベルをまだ下回っていません。NYダウは確かにそこからすでにマイナス7.34%の下落となっていますが、見るべき視点を少し動かすべきと思っています。

  決して状況はよくはないと思います。手を叩いて喜び、胸を撫で下ろせるような話より、圧倒的に悪い話の方が多いのも事実です。でも少しずつ、少しずつですが良い話も紛れ込み始めているように思われます。投資のチャンスはそんな中に出てくるものだとは歴史が教えてくれています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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