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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年2月16日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(2/13終値)
前週末比
(2/6比)
日経平均 7,779.40 -297.22 -3.68%
NYダウ 7,850.41 -430.18 -5.20%
金利・為替 週末終値
(2/13終値)
前週末比
(2/6比)
長期金利 1.260% -0.075%
ドル/円 91.93  
ユーロ/円 118.30  

オバマ新政権、立ち上がりは上手くいっている

前週の総括

■好材料に恵まれなかった1週間

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。前々週末(2月6日)に発表された米国雇用統計が34年振りの落ち込みとなったにもかかわらず、米国株式市場が大きく反発したことを受けて、週初の日経平均株価の寄り付き直後こそ高く始まったものの、当初9日に予定されていた米ガイトナー財務長官による金融安定化策の発表が翌日に延期されたり、またロシアの民間債務の繰り延べ要請などがロシア通貨危機や欧州経済への更なる悪影響などを想起させたりしたため、その後は一貫して下落、結局は日経平均株価でマイナス3.68%の下落、NYダウでマイナス5.20%の下落となって1週間の取引を終えました。

■市場が期待していたほど単純ではなかった金融安定化策

 注目の10日に発表された米国の金融安定化策は、残念ながら市場が期待していたような単純な公的資金による「バッドバンク構想」(銀行の不良債権を分離して引き取るシステム)ではなく、官民共同による1兆ドル規模のファンド組成という複雑なものとして発表されたため、失望売りを誘いました。これを受けたNY市場10日の反応は前日比約382ドルの急落。翌11日は建国記念日で日本市場はお休みだったためパニックにはなりませんでしたが、もし日本市場が普通に立会日であったらと思うとゾッとしないこともありません。ただそもそもそんな単純な形になると期待する方が無理があると思うのですが・・・。

■過去最大級の米景気対策法案は可決された

 ただ併せて進んでいた米景気対策法案の審議状況と、13日に上下両院で可決された過去最大級の米景気対策法案の内容などを総合的に判断すると、ここまでの状況は予想の範囲、いえもしかすると予想以上にオバマ新政権の立ち上がりは上手くいっていると評価すべきだと思っています。16日までに法案を成立させたいとしていた点も、金額も両院での調整過程で減額になったとはいえ、オバマ大統領の当初案7,750億ドルを若干上回る7,870億ドルである点なども評価すべき点だと思います。

■一番怖かったのは大規模な米国債入札、これも成功

  実は、株価がこうした場合に不安定に上下変動するのは常套であり、エコノミストや評論家と言われる人たちが諸手を挙げて「素晴らしい」と絶賛することなどもあり得ないので、こうしたネガティブ・リアクション自体は気にしていませんでしたが、同時に行われた史上最大規模の米国債の入札だけは真剣に気にしていました。3年債、10年債、30年債と火曜日から連続で大量に行われたからです。もしこれが失敗に終わっていれば、よく言われているようなドル暴落、基軸通貨崩壊などの悲観シナリオが一気に頭をもたげてくるところだったからです。でも蓋を開けてみれば口の悪い評論家でも「市場がこなした入札規模を考えれば、結果は成功だったと言わざるを得ないだろう」と鉾を収めています。なのでドルも安定していました。

■小泉劇場復活か?

 先週の日本市場の影の注目点は政治。小泉元首相の「怒るというより、笑っちゃうくらい、ただただ呆れている」という麻生首相の郵政民営化問題に対する姿勢への批判。もしかすると、これで再び世論がぐっと政治に目を向けるかも知れません。衆議院選挙が遅かれ早かれ来ることは誰もが承知であり、今の政治が政権問題ばかりで、就任後わずか1カ月足らずで史上最大規模の景気対策をまとめる米国政治に比べ、4カ月以上かけても2兆円の支出の可否すら決められない日本の政治。

 世論の「どっちになっても変わらない」というトーンは日に日に高まるばかりですが、もしかすると大きな引っ掻き回しに発展してくるかも知れません。事実、民主党小沢代表が紆余曲折の挙句にクリントン国務長官と面談することになりました。民主党代表として、新政権を担った場合にどう政権運営するつもりなのか、どんな言質が飛び出すか、今後要注目で面白くなってきました。

■原油は引き続き低位安定続く

  原油はWTI原油先物価格に関する限り、更に低下して週末37.51ドル。その前日には33.98ドルと直近の安値を下回った時もありました。ただ日本に影響するドバイ産の原油価格は若干上昇してもいるようですが、大勢は問題ない方向です。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは月曜日からの日経平均株価指数の推移チャートです。----- 真ん中に休日が挟まっていますが、木曜日まで一貫してズルズルと下がったことがお分かりいただけると思います。週末の戻しはショートの戻しと、G7への若干の期待感の表れでしょうか>

今週のポイント

■16日は米国休場(大統領記念日)、翌17日がGM・クライスラー再建策提出期限!

  来週の市場はネタ切れで様子見気分が強く始まるだろうと思います。G7は終了し、それなりの共同声明が発表され、それをもって売り材料とするものではないと思いますが、だからと言って買い材料とする内容でもありません。そして16日月曜日はプレジデンシャルデー(大統領記念日)ということで、米国市場はお休み、そしてその翌日17日を期限としているのがGMとクライスラーの再建策の提出です。時差の関係があり、日本市場は水曜日18日の立会にならないとその結果を織り込んでの動きは取れません。

  GMがチャプター11(連邦倒産法第11章)の適用申請まで視野に入れ始めているとの報もあり、これが現実味を帯びてくるようだと、いくつかの金融機関も無傷ではいられず、問題が拡大するかも知れません。

■欧州は大丈夫なのだろうか?

  先週スイスの銀行2行が相次いで決算を発表しました。金融立国であり、スイス銀行という呼び方で抜群の信頼感を持っているお国柄ではありますが、スイス銀行というのはUBSとクレディ・スイス2行の総称です。その両行合わせた最終の赤字額は279億スイスフラン。これを現在の円高傾向の為替水準約79円で計算すると約2兆2千億円の最終赤字となります。同国はユーロ加盟国ではないのでECBの力は及びません。因みに、IMFの統計によると2007年の同国のGDPは日本が43,837.6億ドルであるのに対し、その10分の1以下となる4,239.4億ドルでしかありません。

 欧州といえば、先週ユーロ圏の前四半期GDPがマイナス1.5%と通貨統合後で最悪の減少幅となりました。ロシアの民間債務繰り延べ要請など、以前緊急レポートで指摘した通り、相変わらず欧州関連の報道自体は少ないながらも、欧州リスクの顕在化は確実に続いています。日本企業の欧州通貨変動に対する免疫力の低さが露呈した決算発表後のことでもあり、引き続き欧州経済の動向には細心の注意が必要だと見ています。

■頑張れインテル!

  そんな暗い状況下、また決算発表では半導体関連は同製造装置関連も含めて惨憺たる有様が露呈している中、世界最大の半導体メーカーであるインテルは、次世代半導体の生産体制構築に今後2年間で過去最大となる合計70億ドルを投じると発表しました。右を向いても、左を見ても、減産、縮小、撤退などの不景気な文字が躍る中、この決断は評価に値すると思います。実はインテルの設備投資計画は波及効果がとてもあります。それは製造技術で全般に影響するだけでなく、素材などにも広く関わってくるからです。

  うがった見方をすれば、これはグリーン・ニューディール政策の一環に乗っているともいえます。半導体の次世代技術は消費電力との戦いでもあります。それは強いては発熱問題との戦いでもあり、結果としてはECOに結びつく話だからです。そこに世界最大の半導体メーカーが過去最大の狼煙を上げるということは、いろんな意味でインパクトのある話です。半導体技術のロードマップをもう一度広げてみる価値はあります。関連企業はどこなのか、広がりは、いろんなことが見えて来るはずです。

 暗い話題の中にもこんな明るい話はあるものです。今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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