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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年2月9日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(2/6終値)
前週末比
(1/30比)
日経平均 8,076.62 +82.57 +1.03%
NYダウ 8,280.59 +279.73 +3.50%
株式 週末終値
(2/6終値)
前週末比
(1/30比)
長期金利 1.335% +0.065%
ドル/円 92.01  
ユーロ/円 119.00  

もう始まった米国ハイテク株のリバウンド!?

前週の総括

■とても気になるのは急騰するPER

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価で言えば8,000円を中心にして株価の変動はおよそ上下に350円。結果的には前週末比で1.03%の上昇となりましたが、実はTOPIXも東証マザーズ指数も、JASDAQ指数もすべて前週末対比ではマイナスとなり地合いの悪さを証明しています。売買代金も1兆4,000億円前後が定着した感があります。そんな中でも特に気になるのがPERの急騰です。本格化してきた第3四半期決算の発表に合わせ、通期の見通しを下方修正する企業が急増した結果を受けてのことですが、前週末となる1月末の日経平均採用全銘柄の予想PERは19.59倍であったものが、先週末2月6日は36.05倍にまで急騰しています。決算発表が本格化する前の1月中旬は大体16倍前後で株価8,000円台を維持していました。市場の目線が何処にあるかによりますが、これはちょっと好ましからぬ状況ではあります。

■ただし配当利回りやPBRはまだ防波堤になる?

 ただし、配当利回りは減配発表がまだ少ないこともあり、現時点では2.50%を維持しており、この1週間でやや上昇気味の新発国債10年物の利回り1.335%に比べても、まだ2倍近い水準を維持してはいます。また内容が保有株式の評価減による利益減少であったり、蓄積された資本を大幅に毀損するほどに最終利益段階で赤字が広がっている状況ではまだなかったりするため、PBRで前期基準の0.92倍が大きく1倍を超えて来ているとは考え難く、これが下値の防波堤になっているのかも知れません。

■円高との表現は、対ドルと対ユーロで区別しないと読み間違える

 為替の動き、円高が喧伝されていますが、週末のNY市場の引け値を見ると対ドルが92.01円、対ユーロが119.00円と、円はむしろ弱含んでいます。とはいえ、この水準感は1月中旬頃に等しく、当時の日経平均株価は8,400円程度、為替の円安をはやしての戻りがあるならその程度までと考えるのが無難かも知れません。なぜなら、ユーロが対ドルでは下がり続けており、再びリーマン・ショック後の水準をうかがう展開になっているからです。対円ではドルにつられてだけ、と見ることができます。

■それにしてもユーロ安は日本企業にはマイナス材料

  先週、技術的な流れへの興味も尽きないことからニコン(7731)の決算発表を確認しに行ったのですが、そこで確認できたのはやはり日本企業はユーロ安に対する抵抗力、対抗手段が限られているということです。同社は「値上げする」というカードをその技術的優位性からもちらつかせることができたため、その会社側コメントを受けての6日の株価は反転しましたが、私には現地調達率を上げるなど、対ドルのような収益変動ヘッジの王道手段を適用できない日本企業の苦悩を代表的に見たような気がしています。

■もう始まった米国株のリバウンド!?

  しかしその一方で、米国株式市場は私の期待通り堅調です。これまた予想通り、オバマ大統領就任後の政権運営では、政府高官の納税洩れ問題が相次いで取り沙汰されたり、景気対策法案が、上院可決は一旦9,000億ドル超に膨らんだものが7,800億ドルに大幅減額されたり、それでもなお、下院で可決済みの8,180億ドルとの再協議が必要など、新政権の多難な出足をメディアが取り沙汰するには事欠かない状態となっていますが、それでも実は米国株式は堅調です。失業率は16年振りの水準に悪化、雇用者数の減少は34年振りの水準まで悪化した雇用統計の発表を週末受けても株価は上昇しました

■注目すべきはハイテク株中心のナスダック

  先週1週間でNYダウは3.5%上昇しました。しかし、その裏側でS&P500種は5.17%の上昇、ハイテク株のウェイトが高いナスダック総合指数にいたってはNYダウの2倍以上となる7.81%もの上昇となっています。これを更に大統領就任式の裏での大幅下落後と比較すると(下のチャートをご参照)、NYダウが4.17%の上昇であるのに対して、S&P500が7.87%、そしてナスダック総合指数はなんと10.47%もの上昇になっています。ちなみにこの間、大統領就任式の下落を受けて下落したところ(21日)からの日経平均株価の戻りはわずか2.21%、TOPIXに至っては0.47%に過ぎません。米国でハイテク株のウェイトが高いナスダック市場の変容ぶりが実に際立って見えます。

■原油は引き続き低位安定続く

  原油は引き続き低価格を維持してくれています。週末NYでの終値は40.17ドル。OPECが減産したり、WTI原油先物の価格が日本の原油取引の実勢を反映していないというような指摘も聞こえてきていますが、代表的な原油先物価格の現状は安いようです。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは株価指数の比較チャートです。----- オバマ大統領就任式の1月20日を起点にとって主要株価指数の変化率をチャートにしました。上からナスダック総合指数、NYダウ、日経平均株価そしてTOPIXとなります>

今週のポイント

■米国株がこの段階でどこまで打たれ強いかに注目

  前述しましたが、先週末発表のあの雇用統計発表を受けても上昇した米国株式市場の打たれ強さは注目に値すると思います。聞こえてくるニュースだけを頼りにブラインドで株価予想を立てたら、多くの人がマイナスを予想する状況ですが、結果はプラス。ひとつにはそれだけの悪材料が折り込み済みで、相当な悲観シナリオの元に米国株は現状の株価形成がなされているということなのかも知れません。そしてもう一つは今週月曜日、9日にもガイトナー財務長官により発表される追加的な金融安定策の概要に、市場が期待をかけているということなのかも知れません。その翌日にはバーナンキFRB議長とガイトナー財務長官の議会証言が予定されていることも注目すべき事柄です。

■なぜ、米国はハイテク株がいち早くリバウンドを開始したのか

  ただこれだけではなぜナスダック総合指数、言い換えるとハイテク株の戻りがなぜ際立っているかが説明できません。金融安定化問題は直接的には金融株へのメリットが一番顕著になるべきものだからです。ではなぜハイテク株のウェイトが高いナスダック総合指数の戻りが顕著なのかといえば、その理由は「[特集]Yes, We Can.の経済効果」の中にもありますし、楽天証券新春講演会でもご説明したつもりですが、それがオバマ政権の特徴だからです。

■思考プロセスを変えるタイミング

  これを単にグリーン・ニューディール政策と言われる部分にだけ注目したり、現下の情勢を上辺だけで紐解いてみても全容は解明できないものかも知れません。しかし、この新政権成立の背景をつぶさに調べていくと、この結果はオバマ政権が成立した以上は必然の結果とも言えるものと見えてきます。恐らく金融市場の思考過程は、この先幾度が大きく修正を余儀なくさせられると思っています。少なくとも、8年間続いた共和党ブッシュ政権下に脳裏に擦り込まれた思考過程、言い換えるならば思考プロセスのフロー・チャートは大きな組み換えをしないと役に立たないものとなっていると思います。その証左が今の動きです。ユーロ圏経済の地滑り的な悪化、期待され続けた新興国経済の停滞、などもその一環です。

■日本市場はマインドと為替の引っ張り合い

  日本市場について、予想PERが日経平均株価採用225銘柄の予想ベースが急落してしまった(必然ですが)こと自体は日本の株式市場の当面の動きについては結構な重石になる可能性が高いです。市場の視点が09年3月期から10年3月期へと移行したとしても、集団的にマインドが振れ易い国民性からしても、足元を急激に下方修正した企業収益をベースに急激に楽観的なシナリオに書き換える企業経営者もいなければ、アナリストもいないだろうからです。

 ただ大きな問題、企業収益の足元を急激にここまで悪化させた理由は、このところの決算発表を見ている限り、そのほとんどの部分が為替変動によるものです。その意味においては、為替が円安に動けば急激に改善するかも知れません。ただ、ECBはもとより、英国でさえまだ利下げ余地はあり、欧州通貨の下落はまだ続く可能性が高いです。一方、政治リスクなどを捉えてみると、我が国日本の通貨、円が独り勝ちを続けられる理由も乏しいと思います。郵政民営化を否定するような首相発言は、国民の民意を反映した衆議院の自民党絶対多数の状態を自己否定するものであり、結果として解散総選挙を早めることになる可能性をはらんでいます。今、この時局で日本の政局が世界金融市場でクローズアップされるというのはいかがなものかと思っています。単に通貨だけが売られるならば良いのですが…。

■ただやっぱり日本の技術は凄い

  しかしあらためて日本企業の凄さを実感したのは、トヨタやホンダのハイブリッドの技術です。ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、私は元々投資アイデアの切り口として技術志向が強く、車やハイテクのそうしたトレンドを細かく追い続けてきていますが、このところ相次いで発表される日本勢の環境対応技術には惚れ惚れします。株主として応援するならやはりこういうところを思ってしまうのは、まだファンドマネジャー時代の気持が残っているからかも知れません。F1から撤退してまでも開発リソースをリアロケートするホンダがあったかと思えば、赤字転落の中であれだけの巨艦をもの凄いスピード感の中で転舵するトヨタがありました。着目点は多々あると思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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