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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年2月2日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(1/30終値)
前週末比
(1/23比)
日経平均 7,994.05 +248.80 +3.21%
NYダウ 8,000.86 -76.70 -0.95%
株式 週末終値
(1/30終値)
前週末比
(1/23比)
長期金利 1.270%% +0.040%
ドル/円 89.94  
ユーロ/円 115.35  

ユーロに振り回される株式市場

前週の総括

■やはり問題は欧州か、米国から離れた投資家の視線

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。そして、まずは添付の二つのチャートをよく見てください。日経平均株価は週初前週末対比△63.11円安の7,682.14から始まり、29日木曜日にはザラバで高値8,305.38円をつけながらも、週末終値は7,994.05円と5日間の日中足を繋げるとまるで太鼓橋。この間のドル円の運びは90円を挟んだボックス圏での推移で、先週注目を集めた英ポンドは120円から130円へときれいな右肩上がりの線を描きます。そして下のチャートのように、ユーロ/円だけが見ての通りの太鼓橋です。ユーロ/ドルも同様な太鼓橋なのですが、時差の関係上、日本がクローズしてから余韻が長いため最後のユーロの下げが目立ちます。

 メディアなどで目にする市場コメントは米国オバマ政権に関するものや、或いは10−12月期の企業決算悪化が中心のようになっていますが、市場の目線は明らかに欧州経済の動向にあることが解ります。為替相場ぐらい明解にグローバルな投資家の目線を反映する市場はありません。何故なら、極めてシンプルであるうえに、流動性が高いため恣意性が入り難く、グローバルな資金移動の状態が反映されるからです。

■ユーロの利下げ余地膨らむ

 前回のレポートで懸念材料として触れましたが、30日に欧州連合(EU)統計局が発表したユーロ圏15カ国の昨年12月の失業率は、季節調整済みで8.0%と更に悪化、加えて、ユーロ圏16カ国の消費者物価上昇率(速報値)は前年同月比で1.1%、前月比で0.5ポイントの低下で1997年以来の低水準となりました。この前日には、かのジョージ・ソロス氏が「不良債権に対処する世界的な取り組みを欧州連合が推し進めなければユーロは生き残れなくなる可能性がある」とコメントを発表したとも伝えられたこともあり、週央までは英ポンドの戻しと共に動いたユーロが再び軟化したというのが背景です。英ポンドは週初バークレイズ銀行が追加資本は要らないと宣言したことが好感されて見直されています。

■朗報はガイトナー財務長官誕生

 ほぼ間違いはないと思っていましたが、内心ちょっとした不安材料と思っていたのが、米国オバマ政権で財務長官に指名されていた元NY連銀総裁のティモシー・ガイトナー氏が財務長官に問題なく就任できるかということでしたが、現地時間26日、第75代目となる財務長官に無事就任しました。1月15日付緊急レポート「日経平均株価が再び一時8,000円割れ」で「納税漏れなどがあったことが13日分かり、米国民主党内には問題ないという意見が多いものの、共和党には疑問視する声もあり、議会上院での指名承認が難航する可能性も出ている」と指摘した通り、財務長官就任に黄信号が灯っていただけに、これは先週の大きな朗報となりました。何故なら、財務長官のこの人選がつまづくと、オバマ政権への期待の絵がちょっと変わってきてしまうからでしたが、これで安心しました。

■ロシア経済が厳しい状況へ

  ただもうひとつ指摘しておかなければならない市場の爆弾があります。それはロシア。ルーブルの下落が止まりません。このままいくと1998年のロシア危機の再現ともなりかねず、注意が必要な状況になってきました。背景にあるのは原油価格の下落。ロシア経済は原油や天然ガスの輸出に大きく依存していることは有名ですが、これらの経済への影響は税収の半分以上にまでなっていると言われ、昨年7月の原油価格高値からの暴落の影響が如実に反映された結果となっています。もしロシア危機の再現などとなれば、BRIC’s景気と騒がれた段階で、ロシアに橋頭保を築こうとしてきたいくつかの日系企業にも大きな痛手となることは必至です。

■原油価格はほぼ安値安定

  その注目の原油価格ですが、多少の変動はあるものの、ほぼ安値圏で推移、週末の終値はWTI原油先物で41.75ドル。前週末対比でマイナスの4.75ドルとなっています。OPECは更なる減産のカードをちらつかせて、何とか原油価格の上昇を図りたい様子を示していますが、世界的な景気減速の構図の中で需要が伸びる絵が描けない以上、値上がりの芽は当面なさそうという見方ができます。

■金価格が急騰、値動きは荒い

  一方、金価格が急騰して927.85ドルと、リーマンショック以降の高値を更新して週末を終えています。各国中央銀行による貨幣増刷から、通貨価値そのものへの価値失墜の思惑もあり、買いを集めている状況かも知れません。因みに、昨年はベアスターンズ・ショックの3月に1,032ドルの高値を付けた後、7月15日に988.02ドルの戻り高値をつけ、リーマンショックが931.78ドルのザラバ高値という推移です。安値はヘッジファンドの解約売りが騒がれた10月24日に682.41ドルをやはりザラバで付けています。


(出典:Bloomberg)

<今週の1枚目のチャートはユーロ/円の5日分の日中足です。----- この形を見て、すなわち値の運びをみて似ていると思いませんか?>


(出典:Bloomberg)

<今週の2枚目のチャートは日経平均株価の5日分の日中足です。----- 1枚目のユーロ/円のチャートの週間での変動パターンとほとんど酷似しています。これはドル/円、ポンド/円の動きともまったく異なるものです。時差を考慮するとユーロ/ドルなら似ています。>

今週のポイント

■米国の経済統計に対する市場反応に注目

  今週は現地2日に1月の米ISM製造業景況指数の発表があり、4日に1月米ISM非製造業景況指数、そして6日には米失業率の発表があります。もちろん、その数値そのものが示す米国経済の状況も注目ですが、むしろ注目すべきはそれを受けての市場の反応だと思っています。リアクションの変化は市場がどこまで、どう織り込んでいるかを確認する重要な要素だからです。かねて指摘している通り、米国は世界共通言語の英語(米語)で情報を速報し、良くも悪くも透明性が高い開示姿勢にあり、誰も容易に議論の対象とし易いというのが実態だと思いますが(その対極にあるのが欧州です)、今週はその米国で注目の統計が発表されるので、市場の反応の仕方は気掛かりです。

■新春講演会の御礼

  先週末31日に弊社新春講演会がみなとみらい横浜のパシフィコ横浜 国立大ホールで行われましたが、朝からの生憎の悪天候の中にも関わらず、大変多くのお客様にお越しいただけましたことを厚く御礼申し上げますとともに、個人投資家の皆様の投資活動に対する積極性にあらためて感動した次第です。私も楽天証券経済研究所のチーフストラテジストに昨年6月に就任して以来、初めてビッグイベントで講演をさせていただきましたが、長丁場の講演会のおおとりであったにも関わらず、最後まで多くのお客様に耳を傾けていただけましたことを心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

■新春講演会の内容概説

  内容的には、わずか50分間ですし、冒頭新しい情報提供の形としての「Money TV」の紹介VTRも流したため、正味45分間余りと駆け足の内容となってしまいましたが、米国大統領の就任演説の引用などから「こんなに投資対象、テーマを選別し易い時代が過去にあったでしょうか?」というのが主たるメッセージで、大きな4項目について概説させていただきました。

 またその主たる内容の投資戦略への帰結としては「残念ながら、日本企業でオバマ新政権が繰り出す景気対策の直接の恩恵を受ける企業は実はあまり多くない」というものでしたが、ただそれを受けての3つの選択肢として

 1.それでも市場の噂通りに注意深く選択して流れに乗る
 2.実は身近な米国株、或いはそのままズバリのETFに投資する
 3.時代の流れの波及効果を狙う をご紹介致しました。

2.のETFについては下記の表の通りですが、3.については分散型発電技術の家庭用コージェネレーションについてご説明申し上げました。関連企業も多々あり、これからの投資のご参考にしていただければ幸いです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

テーマ 銘柄名 ティッカー
環境&次世代燃料 ISHARES S&P GLOBAL NUCLEAR NUCL
ISHARES S&P GLOBAL CLEAN ENERGY ICLN
POWERSHARES GLOBAL CLEAN ENERGY PBD
POWERSHARES GLOBAL WATER PIO
インフラ関連 ISHARES S&P GLOBAL INFRASTRUCTURE IGF
ISHARES S&P GLOBAL INDUSTRIALS SECTOR EXI
ISHARES S&P GLOBAL UTILITIES SECTOR JXI
ヘルスケア ISHARES NASDAQ BIOTECHNOLOGY IBB
ISHARES S&P GLOBAL HEALTHCARE SECTOR IXJ
IT関連 ISHARES S&P GLOBAL TECHNOLOGY SECTOR IXJ

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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