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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年1月26日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(1/23終値)
前週末比
(1/16比)
日経平均 7,745.25 -484.90 -5.89%
NYダウ 8,077.56 -203.66 -2.46%
株式 週末終値
(1/23終値)
前週末比
(1/16比)
長期金利 1.230% +0.010%
ドル/円 88.82  
ユーロ/円 115.35  

これで新しい時代がはじまった!

前週の総括

■オバマ大統領就任! レイムダック終了

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週のトピックスは何と言っても、金融市場が待ちに待ったオバマ大統領の新政権が無事誕生したということです。昨年来厳しさを日々増していく金融危機や世界経済の動向の中で、常に言われてきたのが「レイムダック現象」、つまり米国大統領の任期満了に伴う政権移行期の政治空白の問題です。昨年11月4日の大統領選挙によってバラク・フセイン・オバマ氏の大統領就任が決まってからは、最後の「究極のレイムダック状態」とまで言われてきましたが、何はともあれ、無事、オバマ大統領が宣誓式を行い、44代合衆国大統領に就任されました。これで少なくとも「レイムダック現象」は終わり、世界最大の超大国アメリカの舵を向こう少なくとも4年間は握ってくれる人が誕生しました。

 正直、大統領就任式が終わるまで、その観衆の規模や警備体制が聞こえてくるにつけ「もしその時にテロが起こったら…」と心配していました。NYのワールド・トレード・センターにジェット機が突入する映像を見せられてしまった後では、ある意味では何でもありなんだと心配性の心が揺れたものです。大好きな作家の一人、トム・クランシーの小説「合衆国崩壊」の中ではホワイトハウスがテロに襲われていますので、そんなことまでリアルに心配したものです。装甲車並みの大統領専用車からオバマ大統領が降りて歩く姿には、感動もすれども「早く専用車に戻って」と思ったものです。でも、これで間違いなく、時代は前向きにひと転がり始めるはずです。

■欧州がNo, We cannot !!

  しかし、そんな大統領の就任式の中継映像のテレビの右肩では、NYダウがズルズルと下がり続け、なんと前日比332.13ドル安の7,949.09ドル、8,000ドルの大台を割れる展開となったのはなぜでしょうか? その答えは二つあると思っており、この部分をどう捉えるかによって今後の市場見通しに大きな差異が生まれてきます。私の考えは、一つは相場格言によくあるような「噂で買って、事実で売る」という単純なもので、すでに数多言われているように「オバマ政権への過大な期待」という“噂”で買っていたであろうポジションの売りです。

 そして肝心なもう一つの理由は、1月15日付緊急レポートで指摘した通り、欧州リスクの顕在化です。ここに重きを置くか、米国中心に考えるか、欧米とひと括りに考えるかなどにより、全体の見方が変わると思いますが、私は前者である欧州リスクに重きをおいて考えています。英銀大手RBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)が事実上ほぼ破綻し国営化の状況となり、株価は前週末比67%の下落となったことをはじめ、スペインの長期債務が格下げ、更にはユーロ圏16カ国中、7カ国が財政規律を定めた安定成長規程違反という判断を欧州委員会が示したことなどが大きなポイントとして挙げられます。株式市場に限らず、金融市場の多くが欧州の現状を甘く見ていたのではないでしょうか。

 なぜなら、これらを受けて英ポンドはほぼ連日の安値更新、対円で見るとチャートにもある通り23日には一時118円台に突入、ユーロも先週一時は112円台を付けるなど、為替市場が大波乱の展開になったからです。“ヨーロッパ売り”が始まったと言ってよいと見ています。そしてまだECBには利下げ余地が残されています。

■もし、オバマ政権が誕生しなければ・・・

  もし、このタイミングでのオバマ大統領の就任式がなかったら、ひょっとすると世界の金融市場はもっと波乱含みになっていたかも知れません。その一つの根拠が、ドルは対円以外では全面高になっているからです。対ユーロ、対ポンドではもちろんですが、豪ドル、カナダドル、台湾ドルなどに対しても全面高になっています。これらの動きの中では、円が対ドルで13年半ぶりとなる87円台の円高になったのは凄いことだと思います。日米欧の三極比較では、日本の金融機関の受けているダメージが相対的に小さいという評価がなされているからだと思われますが、この先の展開については予断を許さないと見ています。

■米国も悪材料噴出

  米国でも悪材料がこの間噴出しています。米国12月の住宅着工件数は1959年の統計開始以来の最低を更新、またバンク・オブ・アメリカへの公的資金注入など基本的にまだ嵐は過ぎ去っていないということは明らかになっています。市場の目線がここにある限りにおいては、円は対ドルで優位な戦いになると思われますので、円高傾向は続きやすい状況にはあります。ただし「日本って本当に大丈夫か?」と市場が疑問符を投げる時、捻れ現象で閉塞感漂う政治リスクを筆頭に評価は反転するかも知れません。

■原油価格は限月交代により、見た目値上がり

  週末のWTI原油先物の価格は46.47ドル。30ドル台突入と言われていた原油価格が再び40ドル台半ばかと思われるかも知れませんが、これは先物が限月交代したためのテクニカルな側面があり、週末対比では3.90ドルの値上がりとなります。従って、前限月ベースに引き直すと36.51ドル+3.90ドル=40.41ドル、という水準感となり、まだ充分に安くなったレベルにいると思われます。


(出典:Bloomberg)

<今週もチャートは英ポンドの2005年初めからの日足です。----- 最高値は2007年7月20日に251.11円を付けています。昨年2008年7月には215円程度ですが、その後一気に下落して先週23日には118円台もつけました。最高値から約53%、昨年高値からでも約45%の下落を演じています。>

今週のポイント

■こんなにも解りやすい大統領就任演説

  週末土曜日(24日)の日経新聞朝刊に20日にオバマ大統領の演説内容が英語の原文と和約が英語の参考書のように記載されていたのをお読みになった方も多いかと思います。かく申し上げる私も原文で2回、日本語で2回も全文を読んでしまいました。それも受験生のように熟読しました。投資業界に身を投じるようになってから5回は大統領就任演説に接する機会はあったのですが、こんなに熟読したのは初めてです。

  今週末の土曜日(31日)に行われる弊社新春講演会の準備もあり、また特集「Yes、We Can. の経済効果」をまとめるために、オバマ政権の繰り出す8,250億ドルの景気刺激策について掘り下げていたことも手伝い、実に解りやすい就任演説の内容だったと思っています。言い換えると投資戦略に繋げやすいということです。また正直、感動もしました。近日中には具体的な投資戦略やそのポイントを、関連銘柄を含めてご案内できるよう準備を進めています。

■まだ事態は楽観できない

  ただ残念ながら市場全体が安定するには、前述の欧州リスクの顕在化などの問題があり、まだ時間が掛りそうだと思っています。一つにはIT産業にも逆風が吹き始めたことが明らかになってきたことが挙げられます。日米の名だたるハイテク企業の決算が落ち込んでいるだけでなく、独DRAM大手のキマンダの破綻が週末伝えられました。この点は熟慮の必要がありそうです。

  もう一つは、この原稿執筆時点においては、期待のガイトナー氏は次期財務長官の予定であって、また議会での承認手続きが終わっていないということ、すでに前述の8,250億ドルの景気刺激策についての議会承認についても、一筋縄では行かないかも知れないリスクが漂い始めていることなどが挙げられます。

  そして今週後半にはユーロ圏の消費者信頼感指数や失業率などの経済統計の発表もあり、これらを受けて為替市場をはじめてとしてひと波乱あるかも知れません。従って、当面の投資方針は変わらず「手堅く刻むべき」と考えていますが、まったく嵐の中の暗中模索という段階は過ぎたと思っております。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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