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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年1月19日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(1/16終値)
前週末比
(1/9比)
日経平均 8,230.15 -606.65 -6.87%
NYダウ 8,281.22 -317.96 -3.70%
株式 週末終値
(1/16終値)
前週末比
(1/9比)
長期金利 1.220% -0.070%
ドル/円 90.72  
ユーロ/円 120.70  

今週は全世界の期待を集める米国オバマ新政権が誕生!

前週の総括

■一旦は前線後退もやむなし

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。また、木曜日にはザラバで一時日経平均株価が8,000円台を下回る場面もありましたので、状況の整理もかねて緊急レポート「日経平均株価が再び一時8,000円割れ」も書いておりますのでご参照いただけたらと思います。一言で状況を整理するならば、株も為替も、それは日本に限らず、米国も欧州も同様ですが、オバマ新政権に対する“期待値”だけでは大きな流れの方向転換、例えば先週のこのメルマガでご案内したような「一目均衡表上における厚い雲の中の中央突破」みたいなエネルギーは創出できなかったということだと思います。ただ、だからと言って悲観に傾くということでなく、言うなれば一旦後退し、前線に拡がりすぎた兵站を立て直し、再度陣形を整えてから来るべき中央突破のタイミングを計るべき、ということだと思います。

■欧州系で相次いだ悪材料

  先週はファンダメンタルズについては状況悪化の再認識を迫られるような材料が噴出しました。その中で、緊急レポートにも書きましたが、色付けすると米国系は目新しさがないものの、欧州系は市場にとっては考慮外だったものが多かったのではないでしょうか。15日には予想通りECB(欧州中央銀行)は0.5%の利下げを行いましたが、為替や株式市場のその前後の反応を見ていると、ヨーロッパの景気実態については圧倒的に情報量が欠如しているという現実が垣間見えたように思われます。故に市場はそれをこれから織り込みに行かないとならず、欧州における金融市場の困難さはこれから始まる段階だと思われます。結局これがユーロへの過大な期待感醸成の温床であり、故にユーロ・バブル崩壊への原因となったのですが、単純に考えてもあれだけ複数の言語が通用している世界がそう簡単に一つにまとまるはずがなく、情報開示という視点一つとってみても、ハードルはまだ高いだろうなと思われます。またかねてから指摘した通り、欧州系銀行のバランスシートは、域内の景気情勢や証券化商品の評価下落から主として影響を受けるだけではないことを市場が認識始めた局面に入ってきたと思われます。

■米国でも諸々悪材料が発表になりましたが…

  一方、米国市場でもシティ・グループが再度再編の目玉として大きな話題を提供し始め、またバンク・オブ・アメリカにも、シティ・グループに次いで2行目の個別公的資金の注入が発表されました。とは言え、米国市場のこの1週間の株式市場下落率はNYダウでマイナス3.70%と日経平均株価の同マイナス6.87%に比べると小さく収まっています。為替もドル円ベースを週末ベースで比較すると90.23円と90.72円ですからほとんど変動はありません。良くも悪くも透明性が高いというか、情報量が圧倒的に多い米国経済についての問題はサプライズにはなり難く、一連の大きな流れは、やはりユーロの下落から来ていると思われます。

■原油は再び30ドル台半ばに下落、これが消費者マインドにプラス

  年初に中東情勢の緊張感の高まりや、株価反転などの楽観的見通し台頭などによる需要見通しの変化などで50ドル近くまで切り返した原油先物価格ですが、再び30ドル台半ばまで下落し、週末の終値は36.51ドル。実はこれが重要であることが、週末発表されたロイター・ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)に明らかに反映されています。発表によれば1月の速報値は61.9(前月は60.1)と予想(59)を上回っています。理由としてガソリン価格の下落とオバマ次期米大統領の景気対策への期待が挙げられており、原油価格の下落が消費者マインドに与える重要性を示した形になっています。因みに今後5年間のインフレ期待値は3%と前月の2.6%から上昇し、今後6カ月間の先行き景況感を示す指数も57.2と前月の54から上昇しています。


(出典:Bloomberg)

<今週もチャートは日経平均株価の一目均衡表です。----- 案じていいたことが現実になってしまいました。現在雲の下にいます。ただ今月末から来月初めに掛けて雲が薄くなりますので、この間隙をぬって雲の上に“突撃!”(して欲しいですね)>

今週のポイント

■インテル決算の示唆するもの

  先週現地15日、前週に売上ガイダンスを引き下げていたインテルが決算発表を行いました。内容は売上ガイダンスを引き下げた通りのものでしたが、いくつかインプリケーションがあったように思います。

  例えばそのひとつを言うならば、同社の足元の生産量は現時点のパソコン販売量を下回っているということです。意図していることは明確で、いわゆるチャネル在庫と呼ばれるのものの圧縮を図っているわけです。供給が需要を上回れば当然にして在庫が増えるわけですから、在庫を減らすためには需要より供給を減らさざるを得ません。この影響を如実に反映しているのがイビデン(4062)や新光電気工業(6967)といった半導体パッケージの供給企業で、すでに年末の受注状況に明らかに影響を与えていました。

  しかし、これは視点を変えれば、在庫圧縮の過程が終われば、恐らく終わるより少し前からになるはずですが、受注がレバレッジを掛けて増え始めるということが自明です。日系企業の技術的優位性が最も顕著な分野でもあるからです。これは別にインテルのMPU用パッケージに限った話ではありません。当然にして自動車などにも同じストーリーが適用できます。当面は「バーディを狙うよりも、手堅く刻んでパー狙い」とか、いつもより「2番手短いクラブ選択を」というような投資戦略を推奨していますが、この局面、こうした次の戦略を着々と練るには良いタイミングだと考えています。

■トヨタがデトロイトで新型プリウス発表

  11日からデトロイトで始まった世界最大級の自動車イベント「北米国際自動車ショー」で、トヨタが今春から市場投入を開始する新型プリウスを発表しました。デザインは前代モデルのイメージを踏襲するものの、技術的にはかなり革新的なものが新たに投入され、金融危機で不景気感一色の自動車業界において、明るい話題を提供してくれました。例えばエンジンは現行の1500CCから1800CCへと拡大されたにも関わらず、燃費が概算ですが1リッターあたり約19キロから約21キロへ(日本での燃費計算方法とは違うので、日本の新聞等で見られる数値より低くなります)引き上げられています。また環境分野に予算を重点配分する「グリーン・ニューディール政策」を背景として、多くの企業が電気自動車についての展望を明らかにしてきたのは注目に値するところです。前述の完成品とサプライヤーのサプライ・チェーンの中で、多くのことが考えられます。

■いよいよ今週20日、米国オバマ新政権始動

  ただ今週最大のトピックスは、何と言っても20日に世界経済待望の米国オバマ新政権がついに始動開始につきます。大統領就任式のチケットがほぼ瞬間蒸発したように売り切れたという現実に、その期待値の高さを感じずにはいられません。日本の政治システムは大統領制を敷いていませんが、もし同じことが日本であったと仮定して、同じようなことが起こるかと思いを巡らした時、いかに米国での新政権への期待値が高いものであるのかということが垣間見えるように思われます。日本でさえ、オバマ関連図書の売れ行きは絶好調だと聞いているくらいですから。「期待が現実になって夢が終わる」と悲観的な見通しも無きにしも非ずですが、明るい可能性が広がることを期待したいものです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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