※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年1月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(1/9終値)
前週末比
(12/30&09/1/2比)
日経平均 8,836.80 -22.76 -0.26%
NYダウ 8,599.18 -435.51 -4.82%
株式 週末終値
(1/9終値)
前週末比
(12/30&09/1/2比)
長期金利 1.290% +0.125%
ドル/円 90.23  
ユーロ/円 121.21  

豪快なドライバーより、アイアンで確実に刻む時

前週の総括

■まだ順風は長続きしない

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。大発会は年末年始のNY市場の堅調さを受けて予想通り高く始まりましたが、現下の景気・経済情勢を冷静に鑑みれば週央の9,200円台を回復、出来高2兆円超えはいささか行き過ぎだっただろうと思います。日経平均株価の一目均衡表を添付しましたが、所謂“雲”の部分、それも最も厚い雲の部分の中央突破敢行を試みるかのエネルギーを、今の段階で期待できるほどに順風は長続きしなくてもある意味当然かと思われます。

■ファンダメンタルズ再確認は悪材料

  株価が大発会の勢いを維持できなかった理由にはいくつかありますが、直接的には米国市場がNYダウで1月6日に9,000ドルを回復したあとに腰折れしたというのが原因です。ポイントはいくつもありますが、オバマ次期米国政権が繰り出すであろう経済対策への期待値が高まる局面で株価は上昇、雇用統計のような足元景気統計の悪さが確認される段階で下落するということです。この点から見ても、まだ腰の据わった長期投資の資金は米国においてもまだ入ってきていません。一方、日経平均株価の9,000円台半ばに向かっては、出来高加重平均で見ても、底値で買いを入れた資金の利食いゾーンにもあたるため、それらを吸収するほどの市場エネルギーはまだなく、売り方の買い戻しが一巡すると買いが続きません。とはいえ、昨年来の景気情勢に対する不景気なトーンからすれば、年明けの株式市場は思いの外よく健闘していると感じています。

■一時原油価格が50ドル台、天然ガスにもウクライナ問題

  市場がよく持ち堪えたなと思われるひとつの理由が原油価格の上昇にあります。このメルマガでも年末に何度か触れましたが、とりわけクリスマス以降のWTI原油先物価格は30ドル台にまで一時期下落し、金融危機と双璧をなしていたエネルギー価格の上昇という問題は一件落着と考えていたところでしたが、イスラエル中東情勢の緊迫化により原油価格が1月6日にはザラバで50ドル台を付ける場面もあり、またさらに悪いことに、ロシアがウクライナ経由の欧州向け天然ガス・パイプラインの供給をストップするなどという不穏な動きも始まっているため、ファンダメンタルズ的にはとても喜ばしくない状況が続いています。救いは、米国雇用統計の大幅な悪化で原油需要の減退の方がクローズアップされ、WTI原油先物の週末終値は40.82ドルまで落ち着いてきたということでしょうか。いずれにしても、イスラエル情勢とウクライナの問題には注視する必要があります。

■英国が1964年以来の低金利、ユーロも弱含む

  為替の動きですが、週末終値はドル円が90.23円、ユーロが121.21円となっています。ドル円は1月6日に一時94円60銭台までドルが買い戻されましたが、その一方で、欧州のインフレ率がECBのターゲット内に収まってきているとの発表からECBが1月15日に利下げするという観測が台頭、更に英国中央銀行が8日に創設以来といわれる低金利である1.5%へ0.5%の政策金利の引き下げを4カ月連続で実施したため、欧州通貨全般に対円、対ドルで売られる結果となりました。1月15日にECBが実際に利下げする可能性を含めて、金利差の絶対水準からもユーロが対円でも対ドルでも一番弱含む局面が続く可能性が高いと考えています。


(出典:Bloomberg)

<チャートは日経平均株価の一目均衡表です。----- 何も、この一番ぶ厚い雲の中を突き抜けようとしないでもいいのに、と思ってしまうのは私だけでしょうか? ただこうなると1月20日以前に雲の上に出ておいて欲しいなと思ってしまいます。>

今週のポイント

■手堅くパーを狙いましょう!

  今週だけに限らず、当面は「バーディを狙うよりも、手堅く刻んでパー狙い(私のゴルフ技術では手堅く“ダボ”狙いとなりますが…)」という投資戦略を推奨します。つまり流れと勢いに乗じて勇猛果敢な林越えや狭いフェアウェイのピンポイントを狙ったドライバー・ショットなどは考えず、安全にフェアウェイの真ん中の広いところへ着実に刻んでいきましょうということです。

  前述の通り、市場はオバマ次期米国政権への期待値が高まると株価上昇となりますが、足元の現実を突きつけられると急に委縮する感じが強く、上にも下にも断定的なポジションに傾けるのはリスクが高いと思われるからです。1月20日に向けて前者はさらに高まるでしょうし、その一方で、2008年第4四半期の決算発表が今週から本格化し、15日はECBの金融政策発表も予定されています。つけ加えるならば、この政権移行期の最後の間隙をついて、イスラエル情勢は目が離せない状況ですし、ウクライナ問題も展開が読めません。

  故に、株価のみならず、為替も予想外の展開となる可能性を否定できず、ロングショットをぶっ飛ばす!というよりも、ここはひとつ慎重に刻みましょう、という戦略を推奨します。

■ちょっと不安なインテルの決算

  ご存知の方も多いかと思いますが、先週7日インテルが2008年10−12月(第4四半期)の暫定売上高を82億ドルと、昨年11月に示した予想の約90億ドルを10億ドル近く下回るとの予想を発表しました。アナリスト予想の中心は売上高が88億ドルだったので、これを大きく下回ります。今週15日(現地)に正式な決算が発表されます。

  このメルマガを創刊からお読み頂いている方はご承知のことと思いますが、同社の決算はこのところずっと市場のアナリスト予想を上回ってきました。それは“ネットPC”とも呼ばれる500ドル・パソコンが金融危機にともなう世界経済失速の中でも市場拡大が続き、また利益率の高いノートPCへデスクトップPCからのシフトという時代の流れが、Wall街の予想を超える勢いで進展していたからです。昨年12月初旬に出張で訪れた同社のお膝元シリコンバレーにも急速に向かい風が吹きこみ始めたのかも知れません。

  それは8日からラスベガスで開幕された世界最大の家電見本市、国際家電ショー(CES)が世界不況の影響からも例年と違って盛り上がっていないということとも符合しています。人出が少ない、或いは出店者側の規模が縮小しているということについてはさして問題とは思わないのですが、問題は話題となる新製品や新技術が乏しいことです。あのアップル社でさえ、これといった目新しい話題のものを発表しなかったと聞いています。金融と自動車産業という世界景気を引っ張るエンジンが不調でも、ハイテク産業が何とかなるという印象を伝えていたのがこの数四半期のインテル社の決算でしたが、そのエンジンも若干咳き込み始めたとなると事態はさらに好ましからぬ方向へ向かうかも知れないと危惧しています。その辺の見極めをしていく時期に今週から入ります。個々の企業の決算発表を充分に点検していきたいと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。株式投資などの有価証券投資は、投資元本が保証されているものではありません。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/
東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター
0120-885-687(平日8時-18時)(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)

Copyright © 2009 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.