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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年12月29日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(12/26終値)
前週末比
(12/19比)
日経平均 8,739.52 +151.00 +1.76%
NYダウ 8,515.55 -63.56 -0.74%
株式 週末終値
(12/26終値)
前週末比
(12/19比)
長期金利 1.200% -0.020%
ドル/円 90.72  
ユーロ/円 127.52  

激動の一年間でしたが・・・

前週の総括

■日本市場も打たれ強くなったのか?

  先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週のポイントはいくつかあると思われます。一つ目は政府が22日に発表した月例経済報告で2002年2月以来、なんと6年10カ月振りに「悪化」という表現を示したことです。先行きについても「急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整に繋がることが懸念される」となり、景気は「当面、悪化が続くとみられる」と明確な懸念を表明したことです。これを裏付けるように非正規雇用者に対する問題も新聞紙面を飾らない日は1日もなかったと言えます。

  そして二つ目は、市場の予想通りトヨタ自動車が戦後初の営業赤字に転落することを発表したことです。昨年は1年間で2兆2,703億円の営業利益を叩き出した日本のフラッグシップ企業が、年度中3度目の下方修正でなんと1,500億円の営業赤字に転落することを発表しました。これらに続く自動車部品や関連業界の相次ぐ下方修正発表は、頂点の完成車メーカーの現実からして驚くには値しませんでしたが、デトロイトのビッグ3問題が対岸の火事ではないことがはっきりと証明されたことになります。

  そして蛇足的ですが、三つ目は24日に決まった2009年度国家予算の政府案でしょうか。なぜ蛇足的かといえば、国家予算案ですから本来我が国の現状をきちんと認識したうえで、それに対する戦略的なものがあってしかるべきというのが理想論ながらも、単純に一つ目に掲げた月例経済報告の内容と照らして見てもその危機感は感じられないし、米国オバマ次期大統領が次々と繰り出してくる経済対策案などに比べると、“見劣り”という表現では語りきれないものだからです。にもかかわらず、そもそも誰も期待していなかった風も感じるので“蛇足的”だと。

  これらを受けて、日本株式市場が下落したかといえば、週を通じて日経平均株価で+1.76%の上昇、東証一部株価指数で+1.46%の上昇となりました。トヨタの株価も、発表後初の取引となった24日こそ2,765円まで売られたものの、週末の終値は2,900円、前週末終値の水準へ戻しています。為替もドル円が90.50円、対ユーロでも127.25円と、前週と比べてほとんど変化はありませんから、相当打たれ強くなったというのが率直な印象です。

■市場参加者がいません

  一方で、上記現象は充分な売買を伴っての状況ではなく、年末年始の特殊要因などのなせる技で、これをもって「打たれ強い」という判断を下すのはまだ早いという説明もできないわけでありません。先週の1週間の東証一部の売買代金は、4営業日を平均して1兆円割れもはなはだしく、実に8,900億円。最も少なかった25日は何と5,833億円でこれは5年振りの低水準となりました。半日立会ではないのですから酷く低下しています。

  これには二つの明確な要因があります。一つ目は外国人投資家の多くがクリスマス休暇に入ってしまったということです。外資系証券会社の友人たちにメールを送っても“Out of Office Auto Reply(不在による自動返信)”なる自動返信で「I will be out office from Dec 23rd till Jan 5th. Returning to the office on Jan 6th.(12月23日から1月5日までお休みです。6日から出社です)」という寂しいリターンが返ってくるばかりにもうなっています。つまり、その取引相手の日本の機関投資家もそれを察してほとんど動いていないということです。

 ボラティリティもひと頃に比べるとピーク時の3分の1以下となる34.362(私が好んで観測している10日間のヒストリカル・データ)まで週末急低下してきたとはいえ、それでもまだ長い目で見れば充分に変動が大きくなりやすいレベル。その上に今年も年末年始の休みはカレンダー的に比較的長めになる年ですから、こんな時にどちらかに傾けたポジションでお正月を迎えたいと思うファンドマネージャーはほとんどいないはずです。少なくとも私ならばそうです。

  もう一つは株券電子化に伴い一部主力銘柄が売買停止になったということです。NTTや三井住友FGなど抜きでは裁定取引はまずできませんから。そもそも裁定取引業者自体が資金調達を年末年始にやり難い状況でもあり、この出来高減少は当然の帰結かと思われます。米国市場がほとんど上下に動きがなかった理由については、くどくど申し上げるまでもありません。


(出典:Bloomberg)

<チャートは日経平均株価の先週の動きの日中足です。----- 上下に激しく動いたかに見えますが、実はチャートのビジュアル・マジックで、上下の値幅はおよそ250円です。動かなくなりました。>

今週のポイント

■残念ながら日経平均の年足陰線ほぼ確定

  今週火曜日が2008年株式市場の最終取引となる大納会です。年始大発会の初値は15,155.73円ですから、強気とか弱気とかいう次元ではなく、もうほぼ間違いなく年足は陰線が確定です。もちろん、残る1日と半場で6,500円も上昇してくれれば陽線になるのですが…。

  下のチャートは日経平均株価の過去17年間の年足チャートです。白い棒が陽線、青い棒が陰線といって、年末(終わり)が年始(始まり)よりも株価が上昇していれば“陽線”、逆ならば“陰線”ということを示しています。ご覧いただける通り、1980年代の大バブル相場では大きな白い棒が並んでいますが、1990年がこれまた大きな青い棒(陰線)になった(バブル崩壊)あと、青い線が一旦始まると3本続くというジンクスがあるように見えています。2007年がご覧のように青い棒(陰線)で、今年2008年も陰線となるので、ならば2009年も3本目になるのが過去の経験則だ、というのが来年の株式市場も上昇を見込めないという論拠の一つになっています。


(出典:Bloomberg)

<チャートは日経平均株価の年足です。----- 敢えて今年の年足を表示していませんが、チャート上にご自身でイメージしてください。1980年代前半が見えて来るはずです。>

■年足に規則性は・・・・、ない!

 確かに陰線の並びだけ見るとそうとも見えるかも知れませんし、「100年に一度の危機」だのTSUNAMIだの言われると、来年2009年の株式市場に上昇を期待するのは無理なのかなという議論も解らなくもありません。ただ、その間に挟まれている陽線の事情はどうかというと、3本、1本、4本と周期性はありません。またそもそも、73年と74年の陰線は2本まで、その後陽線が2本続いた後の陰線は1本、それも極めて薄いもので、そこから12本連続陽線で大バブルへと続いていきました。実は私自身も年足の周期性に期待を掛けたことがありました。これが見事に2000年と2006年に裏切られました。2002年に「これ以上、年足陰線は続かない」と翌2003年に期待を託す心の支えにしたことはありますが、その程度の信憑性のものだと思っています。

■むしろ、いろんなパラダイム・シフトに期待

 むしろ私はこの期、“今”を多くのパラダイム・シフトの始まる歴史的な大きな変換点と捉えたいと思っています。投資銀行という時代をリードした金融業界のビジネスモデルが破綻しました。一世紀の歴史を持つ自動車企業の名門が国家の支援を仰ぐ事態に陥り、日本の看板自動車企業でさえ、歴史的な苦境を味わう事態となりました。日本の資本効率の悪い企業経営の仕方は「戦う株主(投資家)」などともてはやされた人達から糾弾の対象になってきましたが、逆にこの局面、キャッシュを持つ日本型の企業経営の仕方があらためて評価を受けるようになってきています。

 実生活においても、米国のクリスマス商戦が苦戦しているという報道の中で、ネット通販大手のアマゾン・ドット・コムが過去最高の売上げを達成しています。あまり日本では報じられていませんが、米国北東部の天候がブリザードや“氷が降る”ような異常気象に見舞われているというショッピングモールに出かけたくても出かけられないという裏事情もあるにせよ、ネット通販が好調であることは、米国に限らず、日本でも同様な変化が起きています。個人投資家のネット証券での新規口座開設の急増が話題に上ったのも、正に同一線上にあるストーリーのひとつだと思われます。

   地球温暖化という視点での環境意識は、原油が安い間はどこか他人事であった世の中も、異常な価格高騰の中で誰にとっても身近な問題として感じられるようになったのも今年です。原油価格は下落したにも関わらず、環境問題意識が下火にならないことが何よりの証明です。自動車産業のみならず、多くの産業に“脱石油”の動きはこれからも続くことと思われます。

■年末年始、リフレッシュして発想を切り替えましょう

   何はともあれ、あと1日と半場で2008年の日本市場はクローズします。そこから5日間はお休みです。不思議なもので、除夜の鐘を聞き、カレンダーをめくり、「おめでとうございます」と挨拶をし合うことだけで、気分も随分と一新されるといつも思います。そして初詣。

 私事で恐縮ですが、私自身、2008年の初詣の時には、この年末を楽天証券経済研究所のチーフストラテジストとしてこうして年末を迎えるなどとは、当然のことながら夢想だにしていませんでした。もちろん「良い1年になりますように」と両手を合わせたことは事実ですが・・・。

ある意味、市場の連続性がこの年末年始の休日だけは途切れるものだと感じています。それは市場を左右するのも、景気を左右するのも、センチメントというファクターが極めて重要であるからです。悪材料もたくさんあります。否定はしません。でも同様に良い話もたくさんあるように思います。周りを見直してみてください。私も気分をリフレッシュして、来年2009年を迎え、投資戦略(ストラテジー)を練っていきたいと思います。

 そして皆様、良い年をお迎えください。来年こそ、素晴らしい1年となりますように。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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