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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年11月25日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(11/21終値)
前週末比
(11/14比)
日経平均 7,910.79 -551.60 -6.52%
NYダウ 8,046.42 -450.89 -5.31%
株式 週末終値
(11/21終値)
前週末比
(11/14比)
長期金利 1.400% -0.100%
ドル/円 95.85  
ユーロ/円 120.55  

そ悲観論連呼に物申す!目線を変えれば好材料あります

前週の総括


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 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価の終値は8,000円台を割り込み、NYダウは辛うじて8,000ドル台を維持しました。売買代金が今年8月下旬ほどではないにしろ、18日(火)に1兆5,000億円を割込むまで低下し、週を通じた平均売買代金が1兆6,135億円まで減少したことは先週に引き続き気掛かり材料ですが、週末21日(金)は1兆8,181億円まで回復しています。日経平均株価が8,000円を割り込むと優良株の押し目を拾う動きが出て来ているようです。

  注目点のひとつは長期金利の低下。日銀が政策金利を引き下げた後も1.5%前後で高止まりしていましたが、先週からは、市場の目線が国債増発の需給悪化懸念よりも景気悪化に移ったため、一気に1.400%まで低下しています。

  もうひとつの注目点は何と言っても原油価格の下落。WTI原油先物価格は、20日に12月限から1月限への限月交代をこなしても、ついに50ドル台を下回って49.93ドルへと低下しました。この1週間で7.11ドル、12.46%も下落したことになります。簡単に円ベースに換算し直すと、円高メリットもあり13.53%のマイナスと更に下落幅は大きくなります。7月11日の高値148.35ドルからの下落率をみると、ドル・ベースでも週末終値49.93ドルへ66.34%の下落になりますが、円ベースに引き直すと当時ドル円レートは107.20円ですからその円高メリットも加わり更に下落率は拡大します。単純計算すると15,903円からの下落となり、週末終値を4,786円とするとなんと69.9%、ほぼ70%の値下がりとなります。

  これって、凄いことだと思いませんか? 当時、市場にはファンダメンタルズの悲観論として、その論拠を2009年3月には原油価格が200ドルを突破するというストーリーを元に組み立てたものが並べ立てられていました。100年に一度の津波は津波としても、この真逆になった効用についてもカウントすべきだと考えます。

  株式市場の動きについては、G20が期待外れに終わったということも下落要因の一つですが、前回気掛かり材料として申し上げたCITI GROUPの株価の下げが止まらなかったことと、GMに代表されるビッグ3の資金繰り救済問題が前進しないことが“世界景気の先行き見通し”の懸念材料として燻り続けたこと、これらが米国株式市場を中心として世界株式市場がズルズルと値を消したことの原因だと思われます。

  週末金曜日の日本市場が後場に入って値を戻した理由は、3連休前のショート・カバーも加速ドライバーだと思いますが、きっかけはCITI GROUPの“再建”観測報道が流れたことと思われます。ただ残念ながら市場の期待はこの原稿執筆時点(22日午前10時)では当のCITI GROUP自体のアナウンスで否定されており、NY市場では株価は更に下落、なんと3.77ドルとなっています。恐らく、このまま現経営陣の自助努力で株価が回復してめでたし、めでたしとはならないのが市場の厳しさで、早晩何らかの展開があると思われます。

<チャートは円ベースに換算したWTI原油先物価格のこの1年間の値動きです。----- 原油価格の下落は多くの産業にとって好材料の筈。個人的にも、ドライブ好きの私の懐に嬉しい話です>

今週のポイント

 今週のポイントとはちょっと逸れますが…。この原稿を書くのは特段週末に私的な予定がない限り、週末土曜日の午前中、NY市場の引けを確認して、まだ1週間の印象が濃い段階で書き下ろしています。その際、1週間分の新聞やスクラップなどにも一通り目を通しますが、今週、あらためて強く思ったのは悲観・悲愴気分を煽る文字が巷に溢れすぎているということです。

  「危機」「急ブレーキ」「後退」「下落」「減速」「減産」「解雇」「削減」「過去最低」「鈍化」「冷やす」…、お見事です。これだけ多くのネガティブ・バイアスの掛る文字の羅列を日々目にしていたら、どんな楽観論者だって気分が鬱になります。新聞の場合はまだましな方で、電車の中釣り広告に見える見出しはもっと俯き気分を助長する文字が並びます。GDPの6割7割を個人消費が占めるからなどと理屈を言うまでもなく、景気の“気”の字は気分の“気”。病は気からではないですが、人々の気持が下を向いたら自ずと景気はブレーキがかかります。

 前段で長期金利が低下したという話をしました。長期金利が下がれば住宅ローン金利も下がり、企業が設備投資用に調達する長期資金のコストも下がります。これらは先々の景気にプラスの効果であることは間違いありませんが、その原因論を展開する時には、当然「景気が悪いから」という足元議論が起こります。どちらにその時々の市場の目線が集まるか、実に鶏と卵の関係です。ただひとつ言えること、株屋は楽観論で株価が上がって欲しいと思いますが、景気が良くなり金利が上がると債券価格が下がってしまうという相反する動きがあるということです。これって、つまらないことのようですが、実は案外重要なことかも知れません。市場解説するにも両方の立場がありますから。それ以前に、衝撃的な悲観見通しの方が不思議と受けが良いという問題もあるようですが、度が過ぎるのは如何なものかと。

 今週は27日が米国ではサンクス・ギビング・デーにあたり市場は休場となります。お休みとなるのはこの1日だけですが、日本で言うならお盆休みや正月休みに相当するもので、米国ではこの前後に休暇を取って故郷に帰る人たちが多く、例年市場参加者が減るタイミングに当たります。GM問題も、CITI GROUPの問題もまだ燻り続けていますが、オバマ新政権の閣僚人事も見え始めるタイミングでもあり、米国市場の動きからは目が離せない一週間となりそうです。引き続き冷静に対処したいものです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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