※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年11月10日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(11/7終値)
前週末比
(10/31比)
日経平均 8,583.00 +6.02 +0.07%
NYダウ 8,943.81 -381.20 -4.09%
株式 週末終値
(11/7終値)
前週末比
(10/31比)
長期金利 1.510% +0.030
ドル/円 98.23  
ユーロ/円 124.93  

トヨタ・ショック不発の示す意味

前週の総括


<クリックで拡大>

 先週末の日経平均株価の終値は8,583.00円、前々週末と比較するとわずかに+6.02円、上昇率にして+0.07%の上昇に留まりました。先週のメルマガで「来週のポイントは大統領選挙」と取り上げた11月4日の米国大統領選挙の投票日、24年ぶりと言われる米国NY市場の株価上昇を確認すると、日本でも翌5日には一旦は9,521.24円まで株価は回復しました。しかし、翌日には早くも利食い売りに押され、6日の大引後に発表予定だったトヨタ自動車の大幅減益予想が市場に伝わると株価の下げ足は加速、前日分の上昇分をすべて吐き出す以上に下落しました。

 6日の大引後に発表されたトヨタ自動車の決算は市場の想定をはるかに上回る減益決算で、翌7日の「トヨタ・ショック」が危惧されましたが、その割には落ち着いた結果で週末を迎えたように思われます。事実、同社株価はストップ安で寄り付いたものの、引けに向かっては値を戻し、値幅制限に対して7割の下落にまで戻して引けています。

 一つの考え方としては、10月は1兆円に迫ったという個人の買い越しなどの影響かと見ています。EPS(一株当たり純利益)ベースの減益幅で見るとストップ安を4日間程度は続けないとならないほどの減益決算でしたが、すでに株価は解散価値に等しい水準にあった上、配当維持の方針発表などから年率4%を超える予想配当利回りの水準などを考慮した足の長い投資資金などの買いに支えられたのではないかと考えています。

 このような大手企業の減益決算発表を受けて日経平均採用銘柄の予想PERは14.56倍と前々週末と株価水準自体はほとんど変わらないものの2.32ポイント上昇しています。ただ同予想配当利回りの方は0.06%の低下に過ぎないあたりに、長期保有を志向する個人の投資着眼点があるのかも知れません。また一般に外需の影響を受け難いと言われる銘柄の多い東証マザーズ市場は前々週末対比プラス9.82%となる328.64となり、中小型株へ物色の矛先が少し向き始めた感じも伝えてきています。

  一方、米国市場ですが、NYダウは前々週末対比マイナス381.20ドルの8,943.81ドルで1週間の取引を終えています。前述の通り大統領選挙当日は24年ぶりとなる株価上昇を示し、9,625.28ドルを回復しましたが、週末発表予定の雇用統計がかなり弱いとの見通しで下落しました。ただ、実際に14年ぶりの高水準となった6.5%の失業率が発表されると株価は250ドル近く回復して週末を迎えました。

 ポイントはオバマ次期米大統領の景気回復へのコミットメントへの期待値だと思われます。雇用統計や、GMの運転資金枯渇化を受け、オバマ次期米大統領は選挙後初の記者会見で、自動車産業への支援は最優先課題などと述べています。

  原油は大統領選挙の4日、景気回復期待や過度の悲観論低下を受けて一旦は70.53ドルまで上昇したものの、週末には瞬間59.97ドルまで下落し、週末は61.04ドルで引けています。

<チャートは先週1週間の日経平均の値動きです。-----米国大統領選挙当日、日本株も上昇しました。衆院が解散になって、総選挙になった時、株式市場はどう反応するのでしょうか??>

今週のポイント

 先週末に発表されたトヨタ自動車の決算発表は、外需に対する市場の悲観論をあおるにはあまりある内容になったように思います。「あの、天下のトヨタでさえ、あんなに悪いのか」というトーンは、市場センチメントを悪化させる論陣を張るにはまたとない根拠になったように思います。更に、米国でのGM破綻の可能性などが、週末の新聞記事には至る所にありますから、状況は火に油を注いだ状態なのかも知れません。日経平均株価の先々の見通しなどのメディア記事の中には、5,000円説や4,000円説など、相当悲観的なものも散見されているようです。

 しかしながら、先週金曜日のトヨタ自動車の株価運びを見ていると、どうしても安易にそうした悲観論にはくみしにくいというのが率直な実感です。例えば、先日弊社のお客様の取引データを調べてみて大変興味深い結果が出たのも影響しています。それはこの直近の株価下落局面で弊社楽天証券に口座を新規に開設されたお客様が何を買い付けされたかというデータなのですが、金額ベースの第一位はトヨタ自動車でした。これはあまり驚きがないかも知れませんが、件数ベース、つまり人数で見ると第一位はソニーでした。“値嵩株”の代名詞だった同社株は、先月27日には1,821円まで下落し“普通の株”になってしまいました。トヨタ自動車よりも先に発表した決算内容も決して褒められものではありません。むしろ「けちょんけちょん」に批判したレポートもあったりするようですが、でも、新規に口座を開設なさったお客様の人気No.1はソニーでした。このインプリケーションは今後の投資方針決定の上でよくよく考えてみるべきだと思います。

 ヘッジ・ファンドが元気良かった頃、彼らは空売りを大量に仕掛けることでも投資収益を上げることができました。この数年間、つい先頃までは決算発表が市場コンセンサスを少しでもミスれば、それは格好の餌食となり、完膚なきまで叩き売られるなんてこともよくありました。しかし現在、彼らは解約のための売りには引き続き事欠きませんが、新規にそこまでできるほどには、業界としてパワーを失ってきています。これが新たな市場のパワー・バランスになりつつあるのではないでしょうか? 先週のトヨタ株の決算発表を受けての動きなどと合わせ考え、そんなことを考えています。

 一方、米国市場では引き続きオバマ次期米大統領の発言などが市場の注目を集めていくのではないでしょうか。GMを始めとする自動車産業の状況は全く予断を許さない状況にあり、その中で労働組合を支持母体とする民主党出身の同氏の言動は、金持ち優遇と言われる現政権共和党のそれとは一線を画していくからです。米国ではこれからどんな経済政策が発表されるかがもちろん重要ですが、それに合わせた長期金利の動向が要注目です。財政負担を市場が嫌がり続けるようだと、債券価格の下落と長期金利の上昇が顕著にあらわれ、それが新政権の舵取りを難しくするからです。

 ただここでも私は何度も申し上げてきたように「基軸通貨ドルの暴落」みたいな説にはくみしません。その意味では11月8日(土曜日)の日経新聞朝刊マーケット面にある「大機小機」のコラム、頷きながら読んでしまいました。

 今週末はオプションSQですので、指数的な動きは週後半に荒くなるかも知れません。また週末にかけて発表されるメガバングの決算発表次第ではバタバタする時もあるかも知れません。でもここはひとつ冷静に対処していきたいところだと考えています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。


300名様限定 弊社チーフストラテジストの大島和隆出演、ETFセミナーのご案内

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。株式投資などの有価証券投資は、投資元本が保証されているものではありません。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

Copyright © 2008 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.