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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年10月27日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(10/24終値)
前週末比
(10/17比)
日経平均 7,649.08 -1,044.74 -12.02%
NYダウ 8,378.95 -473.27 -6.78%
株式 週末終値
(10/24終値)
前週末比
(10/17比)
長期金利 1.480% -0.090%
ドル/円 94.31  
ユーロ/円 119.06  

前週の総括


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 前回、「初めて対前週末比がプラスで終わりました」と喜び、「今週こそは緊急レポートを一度も出さないですむような落ち着いた市場であって欲しい!」と儚い望みを託したものですが、願い叶わず週末には緊急レポート「ユーロの暴落と需給が今の問題だ!」を出さざるを得ない市場展開になり、今朝(25日早朝)の気分は窓の外の景色同様、どんよりと曇った感じです。週の始まりの2日間は良い感じで日経平均株価も9,000円台を回復して9,358円まで上昇したのですが…。

 先週末の日経平均株価の終値は7,649.08円、前々週末と比較すると△1,044.74円、下落率にして△12.02%という急落を演じました。週の高値からの下落は、値幅にして△1,709.43円、下落率にして△18.3%と大きく、更にこれはバブル崩壊後の安値まであと46円程度と首の皮一枚で繋がっている状況です。バブル崩壊後の最安値を更新する可能性はなんとも高く、先週末時点のシカゴの日経平均株価先物(CME)の終値は7,550円ですから、寄りつきから未体験ゾーンに突入することは覚悟しておくべきかも知れません。

 理由はもう各メディアから既報の通りなので敢えてここでつけ足すまでもありませんが、21日に英国中銀キング総裁が同国がリセッション入りした可能性を示唆したことが、世界的な新たな動揺突入へのきっかけになったように思います。そして南米アルゼンチンがデフォルト(債務不履行)の回避を目指して年金基金を国営化(大統領が国有化命令に署名した)したことから、今度は新興国そのもののクレジット・リスクへと明確に市場の視点が動いた感じです。

 それでも、現地23日の米国NY市場ではNYダウが8,250ドル・レベルを2回タッチしながらもこれを下回らなかったことから、空売りの買い戻し等が入りプラスで戻してきたことで、日本市場への繋がりも期待されていたのですが、ソニーの下方修正などを理由に実体経済への波及が意識されて大幅急落。更には対ドル、対ユーロとも急激に円高が進んでしまいました。

 為替の動きは週末に配信いたしました緊急レポート「ユーロの暴落と需給が今の問題だ!」を是非合わせてご参照いただきたいのですが、NYでの取引終了時点ではドル円が91.31円、ユーロが119.06円です。24日18時40分にはドルが90.93円をつけ、ユーロが113.82円をつけたことからすると、どちらも大分戻して引けたことになります。

 原油価格はOPEC総会が日量150万バレルの減産を決定しても、世界景気悪化による需要落ち込み懸念鎮静化には役に立たないとの見方が主流でWTI原油先物12月限は前日比3.69ドル(5.4%)安の1バレル=64.15ドルで終了しています。大分安く感じるようになりました。

 一方、金利関係の市場ですが、大幅な株安を受けて長期金利は前々週末比0.09%の低下となり1.480%、短期市場も日銀の誘導目標である水準でほぼ落ち着いています。現状、3カ月以内に0.25%利下げする確率は約23%、半年で約48%、一年だとすでに約63%という水準で短期市場は織り込んでいます。インフレを気にして市場がつい先頃まで利上げムードだったんですが…。

<上のチャートは英国ポンドの推移です。-----地下鉄の初乗り料金も大分是正されたはずです。>


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<右のチャートはロシアの代表的な株価指数RTSをUS$ベースでみたものです------------5月の高値からの下落はなんと約78%。ドル資金の投資家が逃げるからこうなったのか、こうなるから逃げたのかは鶏と卵の議論に等しいです。>

今週のポイント

 今週の週前半はまだまだ荒れ模様かも知れません。土曜日の日経新聞朝刊に掲載された株や為替の見通しでは、最弱気派と言われていた私が逆に最強気派のレンジ想定をしていることになってしまいました。記者の方から「底値はいつですか?」と問われ、敢えて糊しろを作らずにお答えした結果です。ちょっと突っ張り通すには歩が悪かったかなとも思いますが、運用者としてポジションを持っていた頃から「頭と尻尾はくれてやれ」とよく言ったものです。なので、無難に現在値段からほぼ上下に想定レンジを取るタイプではなく、ちょっと運用者時代の心意気が滲んでしまうストラテジストだと、これからもそう思ってお付き合いいただければと思います。

 私が前述のようなコメントを申し上げるのは、別に「えいや!」だけの根拠ない鉛筆舐め舐めの観念論を申し上げているわけではありません。以下少し数字で示せる簡単な根拠の一つをご披露します。

 10月24日付の時価で計算してみると、東証一部上場銘柄1713社の時価総額合計は261兆8,966億円でした。その内、時価総額が1,000億円を超える企業は393社(22.9%)しかありません(減ったなあ…)が、実にこの393社の時価総額合計で226兆4,782億円と、なんと東証一部上場銘柄の時価総額の86.48%を占めることになります。かなり大雑把にいえば、約5分の1の企業で、時価総額の9割を占めるということです。逆に言えば、日本株式会社を代表するビッグ・カンパニーたち、と呼べる企業群です。

 この393社のうち、実に243社(61.8%)の企業、つまり3分の2の企業が、連結PBRが1以下、つまり株価の根源的価値とも言われる解散価値以下で取引をされています。これらの企業の株価がせめて連結PBRが1倍まで買われて、株価のスタート台に戻ったと仮定して計算するだけで、何と東証一部の時価総額は46兆6454億円、全体に対しておよそプラス17.81%の上昇要因となってしまいます。ラフな計算ですが、TOPIXの水準が今より18%近く上がるとすれば約950になります。現状の日経平均株価とTOPIXの関係を表すNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は9.489ですから、これを掛け合わせると日経平均株価は9,014円程度となります。更に、最近のNT倍率の歪みを考慮に入れるために、NT倍率の過去5年間の平均値を計算すると10.0274ですから、これから計算すると9,526円程度となります。

 私は手品や法螺を吹くためのいい加減な観念論を定性的に申し上げているわけではありません。日本の会計制度が正しく機能していて、虚偽偽りのバランスシートが出回っているのでない限り、時価会計の導入されたこれら企業の帳簿価格から計算されるひと株当たりの純資産価格というのはそれなりの信憑性があり、そこに経済学の教科書のような株価の根源的価値を求めて再計算する方法をちょっと取り入れてみただけです。ただ単に、連結PBRが1割れで取引されている企業の株価が、解散価値に等しい水準にまで買い戻されたらという計算をしたまでのことです。ならば現在のこの水準は何なのかというと、正に需給とセンチメントだと思っています。日経平均株価で6,000円台や5,000円台も可能性は勿論なくはありません。ただ、その時、前述の計算はより矛盾を抱くことになります。

 今週もヘッジファンドや諸々のファンドからの換金売りは続くかも知れません。流動性の低い市場に投資をしてしまっているファンドが、流動性の高い日本の大型株市場で引き続き換金売りをだしてくるのかも知れません。また本格化する企業決算を見て、ソニーのように為替で減益下方修正となる内容に徒に悲観論を扇動するような流れが起きるかも知れません。

 しかし、現代投資理論を持ち出すまでもなく、投資家は合理的な行動をし、歪んだ価格形成のあるところには裁定のメカニズムが働くという資本市場の原理原則に立ち返れば、需給やセンチメントに歪められた市場は早晩正しい姿に戻ると考えています。100年に一度の危機的状況だからこそ、冷静に、冷静に対処していきたいと思っています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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