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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年10月20日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(10/17終値)
前週末比
(10/10比)
日経平均 8,693.82 +417.39 +5.04%
NYダウ 8,852.22 +400.03 +4.73%
株式 週末終値
(10/17終値)
前週末比
(10/10比)
長期金利 1.570% +0.050%
ドル/円 101.68  
ユーロ/円 136.34  

前週の総括


<クリックで拡大>

 5週間振りに日経平均株価の対前週末比がプラスで終わりました。因みにNYダウも同様に5週間振りのプラスです。先週末(10月17日)は対前週末(10月10日)比でプラス417.39円(+5.04%)と、大きな変動率に目が慣れてしまっているのでたいしたことがないように感じるかも知れませんが、5%超もプラスです。TOPIXは更に上を行くプラス6.35%、東証マザースにいたっては何とプラス15.35%にもなります。

 振り返ってみると、祝日の関係で4立会営業日しかなかった先週ですが、初日が史上最大の上げ率による急騰を演じたかと思えば、その2日後の木曜日には早くも史上第二位の下げ率となる暴落を演じ、この週末は、たとえどんなに子供にせがまれても遊園地でジェットコースターに乗るのだけはご勘弁と言いたくなるような1週間となりました。ただそれでもこの原稿を書いている週末土曜日の早朝、窓の外の爽やかな秋晴れの景色を見ながら「プラスで終わったんだぁ」と、ちょっとホッとした気分です。NYダウもこの1週間は激しく動いたものの、結局週を通じてみるとプラス400.03ドル(+4.73%)となる8,852.22ドルで終了しています。主要ヨーロッパ市場も総じて週末金曜日はプラスで引けており、この数週間の中では珍しく穏やかな気分の土曜日の朝を迎えています。

 それもそのはず、前号でレポートした通り、G7は具体性に欠けると批判が高まったものの、その直後、より踏み込んだ対策が矢継ぎ早に発表され、緊急レポート「これ以上に市場が望むものがあるのだろうか?」にも記したとおり、ついには市場が督促していた、米国からも公的資金による銀行への直接資本注入という荒技も発表されたからです。ユーロ圏での銀行間取引を政府保証することを明記した包括的な共同行動計画を策定されたり、米国も欧州が決めた銀行間取引への政府保証を実施したり、更にはFRBやECB及び中銀3行が金融システムに無制限のドル資金を供給するというのですから、システミック・リスク解消のために、それこそこれ以上に何を望むのでしょうか?と言いたくなります。

 もちろん「これで十分だ」という議論よりは、「まだまだこれでは焼け石に水だ」とか、「リーマン破綻によるCDSの清算など本番はこれからだ」或いは「実体経済への悪影響が露呈してくるのはこれからだ」といった悲観的な議論が多々なされているのは十分に承知しています。ただ市場の動向は必ずしも材料やセンチメントの変化とは一致しないことが多いのも事実です。つまり悪材料が出尽くさないと市場は底を打たないかといえばNO!ですし、センチメントが悲観を脱しない限り上昇し始めないかといえば、これも明らかにNO!だからです。むしろ、株価が頂点から下がり始めている局面が楽観論のピークであるのと同様に、底打ちから反転して2、3合目まで上昇するまでは悪材料も出続けますし、悲観論や悲愴的な見通しが、これでもか!というぐらいに目に飛び込んでくるのもそんな頃です。

銀行間取引が中心の短期金融市場ですが、まだ動揺や緊張感は収まっていないとは言うものの、日銀は4日間連続で市場から資金を吸収するオペを実施、つまり先週は1週間毎日資金のだぶつきを回収したことになります。それでもなお、週を通じてみると無担保コールO/Nは日銀の誘導目標とする0.5%を下回っており、金融システムの緊張感が高まっていたこの数カ月の中で、この傾向が数日続いたのは久しぶりのことです。長期金利は反対にむしろ上昇傾向で現下の水準は7月終わりの頃のものです。正常化に向かっていると見えます。

 為替の動きは、ドル円で99円台を見ることも何度かありましたが、対ユーロでドルは引き続き堅調で、先々週末とほとんど変わらない1.34090でNY市場の取引を終えています。着目すべきは原油価格の動きです。前回のレポートではCRB指数の低下に触れましたが、原油価格もNYの週末こそ2ドル戻して71.85ドルとなりましたが、先週はついに60ドル台を示現、7月の高値148.47ドルから比べると実に55%を超える下落水準となっています。来年初めには200ドルを超える見通しがあったなんて、夢のようじゃありませんか?

<チャートは原油WTI先物11月限月-----一時期はグローバル・マクロ景気に対する悲観論の中心を為した原油価格、200ドル達成は“夢のまた夢”>

今週のポイント

 今週は先週に引き続きヘッジファンドなどの解約に伴う需給要因と、ファンダメンタルズに対する悲観見通しが市場回復への足引き役になるかも知れません。緊急レポート「 ヘッジファンドの解約予告か?」にも書きましたが、相当ヘッジファンド業界は厳しい局面に立たされているようです。敢えて引用することもないかも知れませんが、同業界内ではゴールドマン・サックスと1位、2位を争うと言われていたプライム・ブローカー部門を擁するモルガン・スタンレーのジョン・マックCEOが16日「年内のヘッジファンド数の減少率は最大で30%にもなるもようだ。当社のプライム・ブローカー部門の規模を変更する必要がある。」とまで言わしめています。この見通しが本当ならば(外れることはあまりないと思いますが…)、ヘッジファンドの決算が集中している11月末と12月末に向かっての需給で良い話は期待しづらいです。

   またリーマンブラザーズの破綻の影響から始まったCDSの清算に伴うドミノ倒しのような話もいくつかは聞こえてきそうですし、それをはやして悲観を煽るものも多々出てくるだろうとも予想されます。新興国や中小国にあっては国自体が財政破綻する可能性を論議せざるを得ない状況のところも出て来ているようですから、悲観論を小難しい顔をして並べ立てようとすれば、材料は山のようにあります。楽観論はどうも思慮が浅いと受け止められがちですよね。

 更に今週後半から日本企業の決算発表も本格化してきますが、慎重な国民性を反映して、恐らく企業側の先々の見通しも極めて慎重に出てくるでしょうし、それに合わせたアナリストによる格下げもこれから始まります。23日に決算発表予定の信越化学(4063)からは半導体市場動向のみならず、磁石用のレアメタルの需給なども垣間見えますし、何より米国市場における塩ビ需要が解ります。つまり米国の住宅市場の状況です。翌24日のファナック(6954)の決算発表からは世界的な企業の設備投資意欲を測ることができます。

 米国からは、敢えて速報レポート「インテルが予想を上回る決算」にも記しましたが、すでに良い話も聞こえてきています。そのインテルと同分野で活躍しているAMD(AMD)も悪くない決算を先週末に発表していますし、IBM(IBM)やグーグル(GOOG)も同様です。

 またデンソー(6902)がフォード(F)の売却するマツダ(7261)株式を取得するなどという、この先々をワクワクさせるような話も始まっています。自動車部品メーカーとしか認識されていないかも知れないデンソーが、フォードが涙を飲んで泣く泣く手放す金の卵を産む雌鶏のようなマツダを、すなわち基本的にはフルラインの完成車メーカーの株式を取得するのですから。これを単なる「自動車部品が納入し易くなる」なんて次元で捉えたら本質が見えていない証拠です。すでに旧聞になりますが、先月いすゞ自動車(7202)が発表した発電専用のディーゼル・エンジン搭載のハイブリッド式路線バスなどの流れと合わせて考えると、いろんなものが見えてきませんか?

 いずれにしても、私がかねがね着目し、何度かレポートさせていただいたこともあるヒストリカル・ボラティリティの水準がブラック・マンデーの当時さえも大きく上回る127.45まで急騰しています。私としては観測史上初めてなのは言うまでもありません。ただ逆にいえば、しばらくは上下の振幅は大きい可能性があります。兎に角ここは冷静に、冷静に対処すべき時だと思います。パニック、狼狽だけは避けたいものです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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