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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年10月14日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(10/10終値)
前週末比
(10/3比)
日経平均 8,276.43 -2,661.71 -24.33%
NYダウ 8,451.19 -1,874.19 -18.15%
株式 週末終値
(10/10終値)
前週末比
(10/3比)
長期金利 1.520% -0.075%
ドル/円 100.68  
ユーロ/円 134.99  

前週の総括


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 この一週間の日経平均株価の下落をあらためて眺めると背筋が凍る思いがします。先週末(10月10日)は対前週末(10月3日)比でマイナス2,661.71円(−24.33%)と、正に暴落です。特に8日水曜日の下落幅952.58円の急落で日経平均株価が10,000円を割った日、これは歴代4位の下落率ともなるマイナス9.38%の暴落で、更にその翌々日となる週末金曜日10日も再び歴代3位となる下落率(9.62%)の暴落を見ました。この日は場中には前日比マイナス1,000円を超える場面もあり、弊社の若い社員の間からは「4桁の下げは未体験ゾーンです!」という声も聞こえたほどです。結局、週を通じてみると日経平均株価は下げ幅でマイナス2,661.71円、下落率にしてマイナス24.33%にも及ぶとんでもない一週間となって終わりました。87年10月のブラックマンデー当時との比較感は影を潜めつつあり、代わりに1929年の世界大恐慌との比較論が台頭していますが、私はその頃にはまだ影も形もありませんので何とも解りません。ただボラティリティは61.912まで急騰しています。

<チャートは日経平均株価とヒストリカル・ボラティリティ-----充分に底打ち感の出るほどに、ボラティリティは上昇している>


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  金融安定化法案が先々週末に米国議会で可決されたとは言うものの、すでにその直後からその実効性には疑問を唱える向きが多く、それを体現するかのように、真っ先に始まるアジア市場での株価急落を受けて先週は始まりました。当然、欧州も米国市場も下げ止まりません。ついにNYダウがあっさりと10,000ドルの大台を割り込むと、世界中の株式市場が更に急落、新興国市場ではロシアをはじめ、インドネシア、アイスランド、ルーマニアなど複数の国が株式市場を一時閉鎖するなど異例の事態となり、またパキスタンでは現地の運用会社に対して当局が基準価格の算出や解約を停止要請したなどという信じられない事態も起こっています。

  余談にはなりますが、この株式市場閉鎖とか、基準価格の算出や解約等の停止は、市場が落ち着くまでの過程ではあまり大きな議論とはならないかも知れませんが、その先に大きな代償をむしろ払うことになると思います。市場が投資家に嫌われる最大のポイントは流動性の枯渇です。上がろうが、下がろうが、自由にいつでも売買できることが担保されていることが、資本市場が死守すべき最低限の機能だと考えます。自由に売買できない市場に新たな投資家は入って行かなくなるはずです。少なくとも、私が運用者なら特別な理由でもない限り、近寄りません。

  英国が金融機関への公的資金注入を発表し、9日には米国FRBを含む世界10中銀が0.5%の同時利下げをするなどあらゆる手段を講じ始めましたが、それでも世界の株価は下げ止まりません。正直、万策尽き果てつつある中で週末に開かれるG7期待で幕を閉じた形となりましたが、モルガン・スタンレーの株価が安値6.71ドルまで急落した場面には肝を冷やしました。9,500億円と言われる増資を引き受けた三菱UFJフィナンシャル・グループは払い込みと同時に減損会計の対象となるような案件を抱え込んだことになります。結局NYダウは週を通じて1,874.19ドル下落して8,451.19ドルとなって週を終えました。

 為替の動きは、円は総じて堅調でドル円が100円68銭、ユーロが134.96円でNY時間を終えています。前週末に比べてドルが約5円、ユーロで約10円の円高となります。前週も言いましたが、基軸通貨ドルは下落していません。対ユーロではドルは1.34080と前週末よりさらにドル高となっており、基軸通貨に取って代わると言われていたユーロの方が史上最高値をつけた7月の水準から17.5%も急落しています。

 ドルの信用不安から「世界の投資マネーがドル資産から逃げ出すためにドルが暴落し、基軸通貨としての役を為さなくなる」というのがよく耳にするロジックです。私はその可能性は低いと主張しつつ、為替の水準についていつもコメントしていますが、ドル不信論者の反論は「ならばドルを売って金へ行く」というのが一つの論法。でも金価格も確かにベアスターンズ破綻の3月中旬には1オンス1,032ドルまで急騰していますが、足元10月10日の終値は849.85ドルと高値から18%近い下落となっています。つまり何が言いたいかといえば、この米国発の金融不安の中にあって、マネーは米国に戻っているということです。新興国通貨や高金利通貨と言われた豪ドルなどの動きを見ていても、マネーは米国回帰しているというのが実態のように思われます。

 原油価格は世界的な景気減速による需要減予想や、恐らくファンド筋などの手仕舞いなどもあって1バレルあたり77.70ドル、やはり7月の高値から約47%の下落です。同様に国際商品の総合的な動きをしますCRB指数も週末289.89まで下落し、チャートでご覧の通り、過去5年間の推移の中で決して高いという水準では無くなったとも言えます。

<チャートはジェフリースCRB指数INDEX-----------ピークからの下落率は既に40%になろうとしている。>

今週のポイント

 期待されたG7財務相・中央銀行総裁会議でのコメントですが、現時点(10月11日午前10時)の評価としては“物足りない”ものとなったと言わざるを得ません。市場が求め催促しているものは、米国での金融機関への公的資金注入ですが、残念ながら具体的ではありません。

 市場は日本の歴史に学んでいます。日本が90年代から「失われた10年」と言われながら乗り越えてきた方法を学んでいます。その段階に照らして、今回の世界的に広がった金融危機を追っているように思われますが、ゆえに今市場が待ち望んでいるのは、個別の金融機関への具体的な公的資金注入による資本増強だと思います。それには、残念ながら、まだ今回のG7での声明は答えていません。米国世論の反論というのは、外から見る私たちの想像を超えて厳しいようです。「なぜ、高給を謳歌していたウォール街の人々を血税で救わなければならないのか?」という話です。その一方で、コーポレート・アメリカの象徴とも思われ続けていたビッグ3が、デトロイト3どころか、デトロイト2になろうとしている現状に、その世論の温度を知る手掛かりがあるようです。

 GMとクライスラーの合併話が進んだリ、Fordが今や大事な金の卵を産む雌鶏となったマツダを手放してまで資金繰りに奔走しようとする辺り、いかに今の米国自動車業界が傷んでいるのかを垣間見ることができます。そこに公的資金は必要ないのか?と当然の世論は騒ぎますよね。おまけに地方財政にまで問題が表面化してきました。映画「ターミネーター」の中で、「I’ll be back!」という名台詞の残したアーノルド・シュワルツネッガー氏は、今やカリフォルニア州知事ですが、彼もまた公的資金の融通をポールソン財務長官に依頼する状況になっています。同州の資金繰りが立ち行かなくなっているからです。

 そんな状況に、いよいよ次の金融ドミノ倒しの芽が始まっています。破綻した金融機関向けのCDSの精算です。勿論、日本の金融機関も無傷ではいられないでしょう。ここで更なるドミノ倒しは何としても避けなければ、1929年の大恐慌の方がまだましだったという新たな歴史の1ページを書きかねません。それだけは避けて欲しい。

■今こそ、政治家が大事な責任を担う時

 あと3週間、11月4日が米国大統領選挙です。レイムダック化はいかにも仕方のないことですが、何とか政治が今こそきちんとワークしてもらいたいものです。当然日本の政治もそうです。今は与党と野党が政権問題で睨み合う時じゃない。超党派でこの難局を乗り越える方針を示すべき時だと思います。現状は消去法的に選ばれている面も多々ありますが、円が強くなっても来ています。ここで巧く日本が振る舞えれば、国際社会における日本のプレゼンスもグッと高めることができます。外国人投資家は小泉改革を評価して買いを入れ、停滞を嫌って売り越しました。もし「日本の政治、やるな」って思わせることができれば、再び外国人投資家の目を惹きつけられるかも知れません。それは国富の増大をもたらすことに他ならず、少子高齢化で先細る日本の未来に光明を見出すことになるかも知れません。早期解散だ! 政権奪取だ!と時事感覚なく固執するより「今の日本がこの世界的な金融危機に向かってできること」を超党派でアピールし具体化させることが、何よりの株価対策、いえ景気対策に成るはずだと考えています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

<<追 記>>
 週末のG7については「具体性が乏しい」と本文中にも、週末のメディアの取材にもコメントしましたが、その後、予想された通り現時点までに下記のような対応が追加で発表され、これを受けた世界の株式市場は大きく反転、NY市場はNYダウが史上最大の上げ幅となる936.42ドルの上昇となり9,300ドル台を大きく回復しています。

1.ユーロ圏(15カ国)首脳が12日、公的資金での資本注入、来年末まで金融市場での銀行間取引を政府保証することを明記した包括的な共同行動計画を策定。

2.米国も公的資金注入に加え、欧州が決めた銀行間取引への政府保証も実施する可能性を示唆、米メディアは近く財務省とFRBが追加の危機対策を発表する可能性があると報道。

3.米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)及び中銀3行が金融システムに無制限のドル資金を供給すると発表。

 また、市場の懸念材料ともなっていた三菱UFJフィナンシャル・グループによる90億ドル規模のモルガン・スタンレーへの出資は、全額優先株という条件変更とはなったが予定通り実行され、株価は86.983%急騰の18.10ドルで13日NY市場での取引を終えた。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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