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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年9月16日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(9/12終値)
前週末比
(9/5比)
日経平均 12,214.76 +2.53 +0.02%
NYダウ 11,421.99 +201.03 +1.79%
株式 週末終値
(9/12終値)
前週末比
(9/5比)
長期金利 1.530% +0.095%
ドル/円 107.94  
ユーロ/円 153.56  

前週の総括

 先週末(9月12日)は対前週末(9月5日)比で日経平均はごくわずかですがプラス2.53円(+0.02%)となり、右往左往した感じは残っていますが、週を通じた変動はプラスでした。新興市場を見ても、日経ジャスダック平均こそわずかにマイナス(−0.08%)でしたが、東証マザーズ指数はプラス2.98%と3%近いプラスとなっています。

 注目している東証一部の売買代金の方も、週を平均して一日当たり約2兆3,483億円、約3兆円に迫った週末金曜日が先物・オプションの同時SQだったという特殊要因を除いても約2兆1,917億円となりました。これは出来高が今年に入って最低となった8月最終週の1日当たりの平均に対して前者でプラス54.6%、後者でもプラス44.3%となるもので、株価の水準論とは別に活況度合いは最悪期を脱してきたように思われます。東証一部全銘柄の予想配当利回りが木曜日(9月11日)には2.00%(日経新聞記載)という水準になっており、割安感を感じられる水準になってきたからなのかも知れません。

 例えば、先週の新発10年国債の利回りは週を通じて平均すると1.511%。8月中旬以降の水準に比べると0.1%程度上昇しているものの、(保有期間中に金利上昇局面があれば評価損が発生するというリスクには目を瞑って)10年間持ち続けて得られるこの1.5%という金利水準に比べて、株の予想配当利回りを評価する感覚があるのかも知れません。因みに週末(9月12日)現在、日経平均採用225銘柄での平均予想配当利回りは1.80%、東証2部全銘柄が2.37%、日経ジャスダックの平均が2.55%となっています。

 一方、注目の米国株式市場は週初に例の住宅公社への公的資金注入発表を受けて289ドルも急騰したものの、全米第4位の大手証券会社リーマン・ブラザーズの株価急落を受けてほぼ同額の280ドル急落で行って来いとなりました。その後3月のベア・スターンズ危機の時同様に当局も乗り出して問題解決に当たるという安心感から週後半は上昇し、週を通じて見てみるとプラス201ドル(+1.79%)となって週の取引を終えています。注目しているのは、添付のチャートにあるように、7月以降3回あるチャート上の下髭となった水準が徐々に切り上がってきていることです。今週は11,060ドル界隈に線が通ります。

 為替の動きは特筆されます。NYの終値同士を比較すると9月5日と9月12日で40銭の違いもありません。しかし週を通じた高安で見ると、5日に最高値105.54円を付けており、住宅公社への公的資金注入発表を受けた翌日の取引となった8日には109.07円へ急落、投資家のストップ・ロスも巻き込んで実態はかなりボラティリティの高い状況となりました。

 背景には投資家層の変化があります。従来の為替市場の参加者は銀行など、その道の専門家が主体でしたが、人気を集めるFX取引を通じた個人投資家の参加が、従来とは違った値動きを導いていると思われます。これは債券市場も同様で、米国発の金融市場の混乱が債券先物と現物債の裁定取引に活発であった外国人投資家のポジションを減少させる一方、CTAと呼ばれる商品投資顧問のプレゼンスが上がってきたため、従来のような債券先物と現物債の価格均衡が崩れている状態を導いています。後者の取引が債券先物と株式先物との組み合わせで裁定を掛ける場合などが多いからです。その意味において、先週は株式先物と債券先物の限月交代が9月限から12月限と行われたため、市場の変動要因として注目されました。

<チャートはNYダウの日足-----下値は切り上げって来ている?>

今週のポイント

 週末現在ではリーマン問題の決着がついていませんでしたから、正直ベースで、前項<先週の総括>部分は土曜日(13日)の午前中に、そして本項<今週のポイント>については月曜日(15日)早朝に書き始めているのですが、今、情報端末に「リーマンは14日に破産申請か」というヘッドラインが出ました。またバンク・オブ・アメリカによるメリルリンチ買収という話もそれより少し先に出ていました。まだ詳細は掴めていないですが、ウォール街の名だたる名門証券会社が二つも消滅するという話には正直驚きを禁じ得ないと同時に、ひとつの時代の終わりを感じます。3月のベア・スターンズに続いて二つの住宅公社、そしてリーマンとメリルリンチ。これで5社目です。

 フレディーマックとファニーメイという二つの住宅公社が公的管理に置かれたことで、両者を取引相手としていたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)取引などがすでに清算処理に入り、思わぬところで損失処理が発生すると懸念されていますが、リーマンが破産申請をしたことで、やはり債券、金利、外国為替、商品のデリバティブ取引を清算(ネッティング)することになり、その飛び火は覚悟すべきでしょう。日本市場の月曜日が休日で、その評価の最初に立たされなかったことを今はありがたく思ったりします。地球を一周してくる間に、ある程度、この問題の初期ショック症状は咀嚼されてくるからです。

 日本では今週初め16日と17日に日銀の政策決定会合が予定されており、米国でも現地16日からFOMCが始まります。まあ、そうでなくても緊急事態に皆さん集まっておられるのでしょうが…。更に今週は現地16日にゴールドマン・サックス、現地17日にモルガン・スタンレーが決算発表をする予定になっていますが、そう考えると昨年から始まったサブプライム問題の大きな山場がここにあるような気がします。慌てずに状況把握をするタイミングです。

 一方でその他の問題についてもきちんと現状把握をしておくべきです。第一はGMが国からの低利融資を受けられそうだということで、株価が10ドル割れとなっていた水準からすでに30%以上切り返しているということです。米国の景気減速の最大のきっかけはサブプライム問題に違いないですが、諸々含めて個人消費が落ち込んだことがその理由です。日本のそれほど米国における自動車産業の裾野効果は高くはないですが、しかしミシガン州を中心にデトロイト自動車産業が抱える雇用は大きいです。そこが立ち行くか、行かないかの中心にいるのがGMですから展開を注視しています。

 第二は原油価格が100ドル割れとなってきたことです。人間の慣れというのは恐ろしいもので、原油価格が100ドルなんて10ドル台で低迷していた頃からすれば天文学的に高い気もしますが、あちこちの論調を見ても「100ドル割れは安い」という様に変化しています。これらは商品価格などにも影響し、着実に価格高騰というネガティブ要因は薄れてきています。

 長くなるので、もうひとつだけ。話題の500ドル・パソコンを有楽町の家電量販店で手に取って見てきました。かなりな人だかりでしたが、あれは欲しいです。iPhoneは正直欲しいとは思いませんでしたが、まずはカタログを集めて検討します。こう思う人は世の中多い筈はずです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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