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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年9月1日 楽天証券株式会社

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チーフストラテジスト「大島和隆」が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値 前週末比
日経平均 13,072.87 +406.83 +3.21%
NYダウ 11,543.55 -84.51 -0.72%
金利・為替 週末終値 前週末比
長期金利 1.405% -0.04%
ドル/円 108.80  
ユーロ/円 159.65  

前週の総括

 今週から週刊のメルマガを始めることになりましたので、よろしくお願い申し上げます。
 先週末は対前週末比で日経平均はプラス406円(+3.21%)となり、 1週間を通じて前週末終値を下回ることなく、水準としても13,000円台を回復して終わりました。週の前半は売買代金が1兆3千億円台と“超”がつくほど閑散な状況でしたが、週末には2兆円を回復しています。東証マザーズは5%超の上昇、JASDAQも僅かにプラスという終りです。長期金利はインフレという材料は既に市場参加者に意識されておらず今週も下落(債券価格は上昇)、 むしろ景況感の悪化を囃し10年国債の利回りは1.405%と1.3%台突入を伺う展開となっています。
 一方、米国株式市場ですがNYダウは前週末対比で僅かにマイナスとなる11,543.55ドルで週末を迎えています。前週末が200ドル近い急騰を演じたレベルとの比較なので仕方ない側面もありますが、週末はPC直販大手のDELL(DELL)が発表した決算が、IT投資の鈍化傾向がヨーロッパとアジアに広がったとの連想を想起させたためNASDAQの下げが目立つ形で、NYダウ共々下落となっています。
 先週国内で気になった材料は世間的には政府が取り纏めた「総合経済対策」だと思いますが、 むしろ私が注目したのは28日午後2時から行われたトヨタ(7203)の「経営説明会」(理由は後述)です。09年世界販売台数を970万台に下方修正する内容でしたが、下方修正報道の直後数分はパラパラと売りが入ったものの、引けは前日比変わらず、 むしろ説明会の内容を聞きながらリアルタイムで板つきを見ていると、まとまったロットの買い物が売り板を払う感じで執行される様を見て安心させられました。買う時を待っていた投資家が いるということです。そして翌日29日は朝から買いが先行し前日比プラス3.4%となる4,930円、5,000円回復目前まで来ています。また29日午後2時過ぎに上方修正が伝えられた任天堂(7974)がストップ高となったことも見逃せません。超閑散市場を抜け出る材料となる可能性を期待させるものとなりました。
為替は、円は対ドルでも対ユーロでも円高、中でも対ユーロでの150円台回復は5月12日以来の水準で週末を迎えました。
<チャートはトヨタ(7203)>

今週のポイント

 今週も週初月曜日は米国市場がレイバーデーのため休場であることから、立ち上がりからの活発な取引は期待薄ですが、前週の動きを見ていて、8月14日付緊急レポート「森を見ず、木を見よ」でお伝えしたことに更なる確信を深めた感じです。是非、もう一度お読み いただけたらと思います。市場全体には強気になれませんが、個別には投資機会が大型株中心に手招きしているように思われます。まさに「木を見よ」です。
 米国市場の今週のカレンダーを見ると、月曜日は「休場」、火曜日「ISM製造業景況指数」、水曜日「地区連銀経済報告(ベージュブック)」、そして金曜日「米国雇用統計」とイベント目白押しで、様子見する材料だけには事欠きません。当然のことながらまだまだ米国金融機関の問題は燻ぶるどころか、たまにチョロチョロと炎が見えるほどですから、気を緩めるのは早いです。米ロの代理戦争となりつつある気もするグルジア紛争も気になります。
 ただ一方、世界景気鈍化の理由の大きな柱のひとつ、原油価格の高騰や商品価格の高騰については、いつの間にかポジティブな状況が増えつつあるのには目を向けるべきです。原油価格は先週末ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で取引されている原油先物10月限で前日比0.13ドル安の1バレル=115.46ドルで取引を終えています。大型に発展しつつあるハリケーン「グスタフ」の動向が注目されていますが、2005年の「カトリーナ」襲来時と比べ、設備が頑強になっていることに加え、襲来への警戒態勢がより入念になっているとの見方が優勢です。また先週の新聞だけでも「C重油、電力向け13%安」「穀物相場反落」など、債券市場がインフレ問題は過去の材料と気にもしていない状況を裏付けています。更に さかのぼると銅や鋼材についても同様な記事が沢山出てきています。つまり企業収益を圧迫すると懸念されていた原材料価格の面ではシナリオがひっくり返りつつあるということです。悲観的に見れば「需要が落ちての価格下落だから、より状況は悪い」ということも できますが、そんなに変幻自在に論拠を変えるのは最初に“弱気あり”の常套手段にすぎる気がします。
 トヨタの経営説明会の今回のポイントは、今回の苦境が長期的には次なるトヨタの発展のためには、 むしろポジティブかも知れないと認識 できる点です。これはトップのコメントにもありましたし、実際、先週私が直接現地の責任者レベルの技術者の方たちと一献酌み交わしながらディスカッションさせて いただいた内容をきっちりと裏付ける内容でした。
 昨今の株式市場の悪弊は、四半期決算の小さな変動に振り回され過ぎていることです。これでは企業の技術開発のタイムホライズン(時間軸)に全く合いません。だからこそ、超優良企業の予想配当利回りが10年国債の利回りの2倍を超える3 %近い水準なんて、経済合理性の ない状態を作り出してしまうのですが、トヨタの例で言うならば、GM(GM)に追いつき、追い越す傍らで、伸び切ってしまった兵站線を一旦立て直し、次なる成長のドライバーとなる技術の核を作る時が舞込んだと前向きに見ることが できるということです。今回発表された環境車戦略はそれを充分裏付けます。ここに大きなビジネス・トレンドが見えます。トヨタ直系のデンソー(6902)やアイシン精機(7259)は勿論のこと、プラグイン・ハイブリッド車やEV車の投入は電気、電子機器メーカーなどに極めて多くのビジネスチャンスをもたらすものです。
 同社が日本の全上場企業(除く金融)の利益の約9 %を叩き出し、株式時価総額が4%を占めるということは、その広大な裾野までの影響力を考えると凄まじいものがあります。旧態依然とした古き日本に後戻りするかのような総合経済対策のインパクトより、こちらに注目した理由はそこにあります。下記URLから動画と資料が手に入りますので、お時間あれば是非ご参考にされることをお勧めします。
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/presentation/2008/index.html
 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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