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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2008年12月15日 楽天証券株式会社

楽天証券

チーフストラテジストが、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

マーケット概況

株式 週末終値
(12/12終値)
前週末比
(12/5比)
日経平均 8,235.87 +318.36 +3.87%
NYダウ 8,629.68 -5.74 -0.07%
株式 週末終値
(12/12終値)
前週末比
(12/5比)
長期金利 1.390% +0.020%
ドル/円 91.05  
ユーロ/円 121.85  

HAPPY HOLIDAY From U.S

前週の総括

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週の大きな話題は国際的にはビッグスリーの救済問題の行方であり、国内的にはソニーの人員削減かと思われます。細かく拾っていくともっとたくさんあるとは思いますが、市場へのインパクトということになると、前者が一番で、後者が二番という感じではないでしょうか。そして前者は週末に大どんでん返しがあり、日本市場はそれに怯え大きく下落したものの、本家米国市場は先々週の最悪の雇用統計発表時と同じように、下落から始まったものの、その後切り返してプラスに転じました。ここからは意見が分かれるところだと思いますが、NY市場は段々悪材料に反応しない、言い換えると、ショート(売り)しても儲からない市場になって来たのかも知れません。

■シリコンバレーから

 実は先週半ばから、(私にとっては)恒例の米国企業調査に来ています。とはいえ、現在いるのは金融危機の震源地NYでもなければ、ビッグスリーのお膝元のデトロイトでもありません。まずはハイテクの里、シリコンバレーはサンタクララにおります。もう14年以上、最低でも年に3回、多い年なら年に6回、自分の目と耳で直接確認するためにこの地を訪ね、レンタカーのステアリングを自ら握って、会社から会社へと飛び回ってきました。今回は諸般の事情により一年振りの訪米となってしまいましたが、いつも最初は西海岸からと決めています。全米を回って、最後に自分自身で得た情報を基に、NYの金融市場関係者と意見交換をして帰国する、というのが一番効率的だと思っているからです(時差の関係では逆に動いた方が体には楽なのですが…)。

 本来ならデトロイトに立ち寄り、最低でもGMへの取材はしたいところだったのですが、今回は時間的な制約があり、シリコンバレーから直接NYに移動し帰国します。従って、そもそもこの段階でレポートするというのも、喧嘩の仲裁を片側から聞いただけの情報でするようなものなので、結論めいたことは差し控えさせていただきますが、現状ではやはり市場の悲観論一辺倒な論調には与しがたく、故に、前述した通り、ショート(売り)しても儲からない市場になって来たのかもしれないと思っています。

 金融危機とビッグスリーの問題はかなりオーバーラップする部分もありますが、ビッグスリーの問題は根っこでは別の次元の話(トヨタと同じ台数の車を世界で販売しても利益が出ない体質)に由来しており、また市場のユーロ経済圏や新興国経済への過度の期待感の剥落ということがこの問題を複雑に見せています。その意味では、ITバブルの里でもあるこの地は技術開発に夢見る場所でもあり、また“工場”という生産現場とも距離を置いた世界になります。故に違和感が強いのかも知れません。それを差し引く必要はあります。

■ここではクリスマス商戦は好調に見えます

 また、確かに、「For Lease」「Available」と空き家を告げる看板を掲げたビルは驚くほど増えていますし、車内のラジオに耳を傾けると「住宅ローンを低金利なものに借り換えたいなら私たちにご相談ください」とフリーダイヤルを連呼するようなCMを何度も耳にしたりします。しかし、San Jose(サンノゼ)にある「Valley Fair」というショッピング・モールはホリデーシーズンど真ん中の週末と言うこともあるはずですが、駐車場が満車では入れないどころか、周辺道路は大渋滞で大変なことになっています。金曜日の夕方は私も中に入ってモール内の混雑ぶりを見てきましたが、流石に土曜日は途中まで近づいてはみたものの諦めた程(流石に仕事とはいえ、周りは家族連ればかりなのに、私一人でその渋滞の中に並んでいるのも情けなく…)でした。Palo Alto(パロアルト)にある「Stanford Shopping Center」というショッピング・モールも状況は一緒です。

 また米国の個人消費の動向を知る上でMacy’sなどの百貨店と並んで注目される店の代表格といえば、写真の3つ。「Walmart」、「BEST BUY」、そして「Costco」でしょうか。時間の許す限り、あちこちのこれらの店にも立ち寄ってみましたが、普通に混んでいました。

 週末の「Walmart」のレジの界隈は、カートが大行列でイトーヨーカ堂のセールの日よりも凄いことになっています。「百年に一度のTSUNAMI」であり、ホーム・エクイティ・ローン(住宅担保の貸付)の担保価値急落で急激に資金繰りに詰まった人たちが激増している…はず、なのですが。念のため申し添えると、もう何年も同じ場所を定点観測してきていますので、ある比較感の中で申し上げています。

■オバマ次期大統領、期待されています

 もうひとつお伝えしておきたいのは、オバマ次期大統領への期待値はやはり随分と高いようだということです。面談した某社の副社長(VICE PRESIDENT)は取材の中で「私は共和党だけど、今回はオバマに投票したよ」と。あの酷い雇用統計を見ても、また下院で可決された自動車業界の救済案が上院で否決されても、それでもプラスになって終わるNY市場。日銀が逡巡している企業からの直接CP買い取りを、財務内容が悪化すると指摘されながらもFRBはすでに始めているにもかかわらず上昇しない米国金利(債券が買われている)。ユーロが若干対ドルで巻き返しているようには見えますが、各金融市場、かなりな悪材料までを織り込んでいるように思われます。

 ただこれをまだ結論とはせず、このメルマガが配信される頃にはNYに移動することにします。今週はFOMCもあり、まだまだ米国市場の動きは要注目です。ただ米国では市場参加者がホリデーシーズンで徐々に減って行っているのも事実です。出来高の薄い中、まだボラティリティーの高い状況は続くと思います。

■極端な円高が続くとは思えない理由のひとつ

 ところで、楽天市場から先週末に配信したメルマガに「ビッグマック理論」で為替水準を考える方法をご紹介しておきましたが、ビッグマックではないですが、比較対象とできる価格を2つご紹介しておきます。

  1. マクドナルド「Double Quarter Pounder with Cheese」とポテト、ドリンクのセット==>6.19ドル
  2. スターバックス「Tall Cappuccino(カプチーノ)」==>2.64ドル
 本来、同じ価値のものなので、この値段は等しいはずですよね。そこに通貨の均衡点を見つけようというのがこの理論です。お近くのお店で値段を比較してみてください。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

 

PROFILE

大島和隆

楽天証券経済研究所 チーフストラテジスト。
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍し、2008年6月から現職。
日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。

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